息を飲み、ドキドキをおさえながら聞く僕。
「牛丼屋さんに行きたいの」
「はあ?」
「あ、高い?高いよね、じゃ、じゃあいいよ」
「あ、あの美久、牛丼屋って、吉野屋とか、ああいう?」
「う、うん、でも高いからいいよお、だってお肉だもん、お肉だもんね」
・・・・・・
高くない
ちっとも高くない。
むしろ安い。
僕の昼飯、しょっちゅう吉野屋。
「あんなところでいいのか?」
「え、あんな所って?シンゴ、だってお肉なんだよ!高いよ、きっと!」
そう言われればそうだなあ。
確かに肉だなあ。
妙に納得する。
・・・違う違う。
美久に説明する。
「ふーん、そんなに高くないんだ〜、びっくりだよう」
早速吉野屋に向かう二人。
出てきた大盛りと並の丼を見て
「うわー、すごいよー、牛丼だよーー!!」
と、目を輝かせている。
そりゃ、牛丼だろう。
吉野屋でカレー丼が出てきたら、むしろ恐い。
「うわー、これが夢にまで見た牛丼かーーー」
安い夢だ。
美久の丼に、僕のタマネギを入れる。
タマネギ嫌いだから。
「んー、今日だけは許すよう」
ハイテンションだ。
いただきまーーす。
「おいしいよう」
「夢がかなったよう」
「うーん、こんなにおいしいものを食べたのは生まれて初めてだよう」
「しあわせだよーーー」
もう、美久は止まらない。
美久 オンステージ IN 吉野屋 って感じだ。
店員も笑っている。
めちゃ恥ずかしい。
「シンゴは良いねえ、こんなにおいしいものをしょっちゅう食べられるんだから」
「いや」
「なあに?」
・・・やっぱやめだ。
笑われて恥ずかしい上に
「美久の手料理毎日食べるほうがよっぽど幸せだ」
なんて台詞吐いたりしたら・・・
もうこの店にこれなくなっちゃうよ。
並盛りを半分くらい残して、(ちゃんと残りは僕がいただく )
ごちそうさまでしたと言った美久はとてもしあわせそうでした。
・・・安い幸せだよ、まったく。
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