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1週間前の手紙

看護士さんの言うことには、受験が終わるまではこの部屋をそのままにして欲しいって海南が言っていたそうだ。

俺に余計な気を使わせないため・・・

馬鹿野郎、病人が気を使ってんじゃねーよ。



粉雪の舞う夜道を歩く。

信号待ちで目を街に向ける。

カップルがやけに目に入る。


「もし良くなって退院できたらね、一番最初のクリスマスイブ、一緒にお祝いをしたいな」

海南が頼み事らしい頼みごとをした初めての願い

「大阪にね、ビルの上に観覧車があるんだって」

あるんだってって、あれ何年前に出来たと思ってんだよ。
それも見たことないって・・・

「そこに行きたいんだ、一緒になんか食べて・・・」

「ああHEPの観覧車な、連れてってやる」

馬鹿やろ・・・
HEPに行くんじゃなかったのかよ

勝手に消えやがって・・・

海南・・・

「私のことを忘れてください。」

海南の優しさ。

俺が忘れたら、お前はどうなるんだよ。

寂しいまま死ぬのか?

治ったらどうするんだ?

海南のおかげで将来も見えてきて・・・

忘れるもんか。

海南はきっと帰ってくる。

俺は約束した。

80になっても待っててやるって。

それしか出来ない。

俺にはそれしか出来ない。

全く無力だ。

高校生だからなのか。

今医者であれば治せるのか?

わからない。

じゃあこの怒りは誰に向けてなんだ?

誰でもない、俺自身の無力さだ。



大切な人が目の前で苦しんでいても、何も出来ない。


支えにもなれない。



言葉すらかけてやれない俺の無力さ。



俺の子供さ加減に。



俺という人間の、あきれるほどの情けなさに。



この涙が。




いつも住んでいる




歩いている




海南とであったこの街で




俺は一人彷徨っている。





海南との別れではなく



ただ俺の無力さに




そんな俺を好きだと言ってくれた海南の優しさと愛情に。





ただ涙している。





気が付いたら河川敷にいた。

絶叫し、号泣した。

海南の名を叫び続けた。

そんな冬の始まりだった。