空が好きだ。
夏の青い空が好きだ。
春の空も好きだ。
子供の頃、空を追いかけて自転車で駆け回った小さな世界。
いつも同じ空。
変わらない空。
空の向こうなんか見えなかったあの頃。
それでも空が好きだった。
やがて少し大きくなる。
自転車を船に乗せ、島を友と巡る。
知らない空。
その空はいつもより大きかった。
少し自由な空だった。
やがて中途半端に大きくなる。
原動機を手に入れた少年は、白い手を引き、共に駆け出す。
共に少し大きな空を共有するために。
空だけじゃなく、空の向こうが少しだけ見えた気がした。
空の向こう。
ソラノムコウ。
やがてその護るべき白い手が消え、少年はさらに大きくなる。
大きくなった少年はもう少し大きな原動機を手に入れる。
自由な翼を手に入れた。
大きな空が、ただ大きな空が見たかった。
そして、空の向こうを
空の向こうを知りたかった。
北に大きな空がある。
お前の知らない空がある。
少年は北へ向かう。
戦友と共に、北へ、北へ。
子供の頃に乗ったあの船よりも、もっと大きな船で
北へ
北へ。
やがて船は北へ着く。
暗がりを駆け出す。
戦友と共に。
やがて広大な大地を少年は目にする。
広大な大地。
緑
畑
その上には、少年が夢に描いていた大きな大きな空があった。
180度青い青い空だった。
工場の隙間から見る空とは違う。
はるかかなたまで広がる空。
少年は空を見上げる。
手を大きく広げる。
手を伸ばしても届かない空の向こう。
空の向こうって何だ?
空の向こう。
少年が愛した空。
その空の向こう。
少年は、空の向こうにも恋をした。
やがて青年になり、それをも超える。
護るべきものは増える。
年を重ねるごとに。
白い手だけだった護るべきものは、その数倍にも増える。
日常に押し殺されながら。
ふと空を見上げる。
いつもと同じ空だ。
同じ大きさの空だ。
あの大きな空・・・
愛してやまない空を、はるか北の大地の空を。
友と出会い、戦友と駆け抜けたあの北の大地を。
そして知らない世界のいろんな空を。
探しに行こう。
そして
空の向こうを探しに行こう。
空の向こうを愛しに行こう。