朝一番から家に行くため久々の通勤通学ラッシュ。
でもニヤついている。
だって初めての二人っきりのデート!

お迎えとボディーガード。
病院に着いたらあっさり終わる。

「診察だけなの」
そうなのか。

この日の事は全部覚えてる。
春になって日差しが強くなるから帽子を買いに行ったんだ。
・・・ひさびさに女の買物の怖さを思い知らされる。

長い!!

「これがいいかなあ?」

「こっちかなあ?」

「さっきのとどっちがいいと思う?」

遠くでジェスチャーで僕に聞く。
くたびれて壁にへばりつくボク。
確か美久さん、今日病院帰りじゃ・・・。

やっと決まって嬉しそうにかぶって帰る美久さん。

喫茶店に行って、ゲーセンに行って、僕の服み立ててもらって。
楽しかった。

家に送って帰る途中・・・。
やっと思い出す。
思い出したくない、暗い影・・・。

カクシテイルコトガ アルンダ

思い出したくなかった。
だって、好きなんだもん。

離れたくないよ。
でも、隠している方が・・・重くなってきたんだ。

あの力。
忌まわしい、人に在らざる力

待てよ。
美久さんの心の中・・・見えなかった。
ままかあさんも。

なんでだろ。

でも、隠しているには違いが無いんだ。

「どうしたの?」
顔を覗き込まれる。

「あ、いや・・・」
なんでもないです・・・が言えなかった。
「顔、青いよ、疲れた、疲れた?」

違うんだ、美久さん。

「美久さん、今日何時まで一緒にいられるかなあ?」

「うーんとね、9時までいいって言われたよ。」

「じゃあ、ご飯食べて行こ、その後話したい事があるんだ。」

「うん、食べにいこー、楽しみだよう」

これが二人の最後の晩餐かなあ?
さて、最後くらい楽しく行こうか。