やわだなあ
上からそう聞こえた気がした。
閉じていたらしい目を開ける。
多分美幸だろうと思われる。
いや、こんな事になる原因になるような事をするのは美幸しかいねえ。
「カバンが後ろから飛んできたくらいで倒れるなよ」
カバンを投げ返してやろうと思って立ち上がって美幸のカバンを持った。
重い
重いなんてモンじゃない。
カバンの盛り上がり方を見て・・・ダンベル2つだな、1個5Kgくらいの。
「テメェ!何入れてやがる!!」
「気にすんなよ、それより山本が呼んでたぞ」
「どうせ俺、今日は休みだからな、帰る」
「単位くれるってさ」
「・・・何の?」
「HR」
「うるさい、そんなもんに乗らんわ!」
「行きなよ」
「男は取引しねぇもんだ!」
「ふーーん、来年は後輩か〜」
悲しいかな俺は魂を単位で売ってしまった。
職員室の前にたたずむ俺。
「何してんだ重役、さっさと入れよ」
校長の高橋が言う。
校長まで俺を重役と知っていたのか。
案外有名人なのかと少し気楽に入る。
「しつれーしまーす」
「重役、来年の担任は俺だな」
1年A組の担任の今井が話しかけてくる。
「やなこった」
「よう、重役、今日は何した?」
「重役、生きてたか」
「死んだって聞いたぞ」
「お、退学じゃなかったのか?」
・・・2年の担任の席が一番奥なので、いろんな教師に話しかけられるんだが、
ろくな会話の内容が無い。
気楽に入ったはずが、担任の前に来る時には顔に縦線が入るくらい沈んでいた。
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