「もっと高いの頼まれると思った」

「え、よかったんだ!」
顔にガーンって書いているようだ。

やがてオーダーした物が運ばれてきて、二人で一緒に食べた。

「ねえねえ、記憶喪失って何処まで忘れるの?」

「昔のことは大概忘れた」

「たいがい?」

「ああ、親のことくらいは覚えてたみたいだけど」

「大変だねー」


・・・大変だね・・・


皆に言われた台詞。

そりゃ大変だったさ。
でもそんなことすら覚えちゃいない。
いや、思い出したくもない。

学校に行っても、友達を覚えていないから転校でもした気分だった。
この事を聞かれるとその時の嫌な感覚にみまわれる。

その後の観登との会話は実はあまり覚えてない。
ふと正気に戻ったのは代金支払いの時だった。

「今日はほんとにありがとう」
そう観登が別れ際の挨拶をする。

「気にするな、約束だからな」

「でも嬉しかったよ」

「そうか」

「うん、子供の頃からの夢だったから」

「?」

「じゃ、またね」

「あ、ああ」

「また電話するねー」

そういって観登はJRの駅へと消えていった。

俺もそのまま阪急に乗って帰る事にした。