「じゃあ今日は早めに帰るわ」

「え?」

「疲れちゃまずいしな、ゆっくり寝ててくれ」

ドアを開ける。

「あ、あの!」

「どうした、何か頼みごとか?」

「ううん」

海南はベッドの後ろから白い袋に入ったものを差し出してきた。

「受け取ってください」

「はぁ」

受け取って袋から出してみる。

ピンクのラッピングが施された何かが出てきた。

「これ何?」

「バレンタインデーだから・・・」

今にも消え入りそうな声で海南は返事する。

「ああ、そうだった」

海南に会った瞬間そんな事飛んでたわ。

「これを誰に渡せばいいんだ?山本か?」

「星野君にだから」

海南の顔はりんごより赤くなっている。

「俺?」

てっきり預かり物だと思った。

「いいのか、俺が貰っちゃって」

「はい」

「ありがとう」

「自分で買ったものじゃなくて申し訳ないんだけど」

受け取ってもらったので安心したのか海南の声は元に戻った。

「帰って開けるよ」

「うん!」


話が終わると気まずくなってそそくさと病室を出る。

自転車をこぐ。

そう言えばバレンタインで礼を言ったのが初めてな気がする。

家に帰り飯を食い、音楽を聴きながら本を読んでいたら雄一郎から電話があった。

「おい、もうすぐ12時やけど数に変更はあったか?」

「ああ、海南から一個貰った」

「ちきしょーー!お前にはそれがあったかーー!また今年も負けやんけーー!」

電話を切る。

海南に貰ったチョコを開ける。

いつもありがとうと言うメッセージカードが入ってある。


礼を言うのは俺の方なんだけどな。

海南から貰ったチョコは甘かった。

12時を越えたあたりの体にはその甘さが心地よかった。