「はい」
海南がハンカチを差し出してきた。
「何これ」
「涙、拭いて」
「泣いてるか、俺は」
「うん」
「はは、恥ずかしいな、かっこ悪いよな」
「そんな事無いよ、なんだか星野君、すっきりした顔してるよ」
「ああ、実際少しすっきりした、海南のおかげだ」
「そんな事無いよ」
「なぁ、海南」
「何?」
「ありがとう」
「何が、何が?」
「いや、いいんだ」
お礼がいいたかったんだ。
俺が生きてていいと認めてくれたことに対して。
海南がそう言ってくれて。
このすっきりした、長年の胸のつかえが取れたこの気分に対してお礼が言いたかったんだ。
「星野君、小学校の時遅れてた勉強はどうなったの?」
「ああ、学校もそんなに行かず、家庭教師が付きっ切りだったよ」
「へぇ」
「だから俺も小学校はあまり行ってなかったなぁ」
「へー」
「おかげで成績だけは中学の時からは良かったな、よく考えたらそのおかげでこの高校も入学できたのかもな」
「それはどうなのかなー」
「まあいいや、そろそろ帰るか」
「そうだね」
「気をつけろ、この辺街灯少なくて暗いからな」
「よく見えないね」
「ほら」
手を差し出す。
「あ」
海南も手を差し出してくる。
「ありがとう」
満面の笑みを俺に向けてくる。
女嫌いの俺でもドキッとするほどのかわいさだ。
・・・
あれ?何で俺手ぇ出してんだ?
「な、何も礼を言われるほどのことじゃない」
慌てて出た言葉がこれだ。
「今日はね、手をつないで帰りたい気分だったんだ」
「へ、変な奴だな」
星が降るような夜を二人で歩く。
「そういえば水着、いつ買ったんだ?」
「朝菜に買ってきてもらったんだ」
「なるほどな」
いつもは病室で話すようなことを、この満天の星空の下で話しながら。
「星野君」
「なんだ?」
「私、男の子苦手だけどね」
「ああ」
「星野君とだったら、全然嫌じゃないよ」
「そうか?」
「星野君とだったらね」
ゆっくりゆっくり。
海南の歩調で。
「ああ」
「すごくうれしいし、ちょっとどきどきするんだよ」
「ああ、俺も似たようなもんかもな」
きっとこの時から・・・
海南の手のぬくもりを感じたこの夜から・・・
きっと
俺の心は海南に向いていたんだ。