「海南」
「ん?」
「俺と一瞬だけ籍を入れて、移植することはできないのか、いやなら手術が終わったら籍を抜けばいい」
「ありがとう、星野君」
そうか、無理なのか。
海南の目を見てそう悟った。
「あんまりじゃないか」
「え?」
「そんなのあんまりじゃないか」
今まで俺は、俺が一番不幸だと思っていた。
きっと海南が病院で入院している姿を見てもそう思っていたんだろう。
だから女嫌いとかなんとか言ってたに違いない。
甘かったのだ。
しかし本当につらい思いをしているのは、この俺ではなく、ここに立っている海南なのだ。
両親を交通事故でなくし、あまつさえ本人も・・・。
「じゃあ海南は不幸になるために生まれてきたのか?」
誰に聞くでもなくそう言葉が出た。
「生きてりゃもっと楽しい事だってある・・・」
そういって思い出した。
「生きてて、良かったよね」
海南がおじさんの家に泊まった時、俺にかけた言葉だ。
あの時俺は気づかなかった。
海南はいつも死と向き合っているから、あの言葉が心から出てきたんだ。
俺が救われた言葉は、海南の本心だったんだ。
もう俺からは言葉は出ず、ただ涙が流れるのみだった。