時計を見たらもう授業の始まる時間だ。
「あの」
海南が切り出した。
「もしよかったら、私が造っていいかな、歌」
「え?」
「吉田君の言うこと、なんとなくわかった気がする。 でもね、考えてもぜんぜん無いの」
「・・・」
「じゃあ、無いなら・・・わかる人間で作ったらいいかなって」
「なるほどな」
「私たちのオリジナルを作ったらどうかなって」
「それもそうっすね」
「最後まで俺らを通すってんなら」
「大賛成だ、篤」
「俺らの最後の夢舞台や、ここはメンバーの海南ちゃんに作ってもらうってのもえーんちゃうか?」
「ああ、最高だな」
「せっかくやし・・・」
皆が海南を見る。
「海南ちゃん、作った責任は取ってもらいますよ」
潤也がめがねを触りながら言う。
「歌手、やってくれるんスよね」
「これは監督命令やな、篤」
「ああ、嫌って言われたら俺の立つ瀬が無ぇ」
「頼むぜ、海南」
「・・・ありがとう」
「礼は俺らが言わなアカンねんで、海南ちゃん」
「ううん、私、頑張るよ!」
海南が音楽を作ることになった。
そのときはまだ誰も知らなかった。
海南の意外な秘密を。
それは、俺ですら。
仮みたいなもんだけど、彼氏である俺ですら。
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