「あ、朝菜」
「どーしたの夕菜、歌が遅れるって、プロデューサ、カンカンだったよ」
「ごめん」
は、プロデューサー? 歌?
「なんのことなんだかさっぱりわかんねーんだが」
「まさかそのことも話してないの?」
「そういえば・・・言ってないね」
「ここじゃ何だから上いきましょ」
二人の海南に連れられ、いつもの部屋に。
「そういえば久々だな、この部屋」
「そうだね」
海南が学校行ってからは、ここにこなくなったからな。
「で、説明してくれたら嬉しいんだけど」
「あ、あのね、私仕事してるんだ」
「ほう、バイトか?」
「ううん、違うの」
「私に見覚えない?」
サングラスを取った朝菜をよく見る。
・・・確かにどこかで見た顔だ。
・・・ってか今日の朝テレビで見た気が
なんか引っかかってんだよな。
だいぶ前、海南がここでカラオケやってた歌。
あれしばらく後に歌ってた奴が・・・
「ひょっとして・・・歌手?のA-sha?」
「おおあたり〜〜〜」
「マジかよーーーーーーーーーー!」
「妹の入院費稼ぐのに頑張ってんのよ〜〜」
なんだ、A-shaって苦労人?
「で、海南の仕事って?」
言うが早いか、A-shaのCDを差し出してきた。
「なに?作曲 U-NA・・・海南かーーーーーーーーー!!」
こくこく
「よっ、彼氏、逆タマ!!」
「馬鹿言うなよ、マジかよ、ドッキリとかじゃねーのかよ」
「誰が素人さん相手にそんなの仕掛けるのよ」
そらそうだ。
「ごめんね、なかなか言い出せなくて」
「で、知ってる人は?」
「ほとんどいないの」
「だろーな」
「この病気治すのにお金いっぱいかかるのよねー、だからバイトとかしなくちゃじゃない?」
「大人気歌手がバイト感覚って・・・」
でもまあ金はかかるってのは本当なんだろう。
病気を治すのに専念できるならいいことなのかな?
「で、何で歌が遅れるのよ?」
「私、学園祭の音楽作ることになったんだよ」
いきさつを朝菜に話す。
「ふーん、じゃあ仕方ないね」
「そんなにあっさりでいいのかよ! 締め切りとかあるんじゃねーのかよ!!」
「仕方ないじゃん、作れないっていってるんだから。 で、どんな曲なの?」
「これだ」
俺はその詩を朝菜に渡す。
「・・・ずるい」
「え?」
「今までこんな良い曲、無かった」
「そうか?」
A-shaと言えば、女子中学生から大人の女性にまで人気のある歌手だ。
共感できるから好きだって。
「この曲、歌いたい」
「え、でもこの曲は皆の」
「いままでの夕菜の曲は耐える女の子ってイメージだった。 でもこれは前向きに生きようとする人間の思いがこもってる気がする」
「確かにそうだ」
「皆って誰?」
「競馬倶楽部の皆」
「明日、皆に会いたい、会って歌わせてもらいたい」
「どうしよう、星野君」
「そんなに気に入ってんなら皆にOK貰えばいいんじゃないか?」
そんなわけで明日、レコーディング会場にプロの歌手が現れることになった。
みんな驚くだろうな。
朝菜はしばらくしてから帰っていった。
「ごめんね」
「何が?」
「お仕事、隠してて」
「ああ、びっくりした」
「嫌いになった?」
「何でよ?」
「なんとなくね」
「ばーか」
「?」
「海南であることには、かわりは無いんだろ」
「うん」
「俺が好きになった海南には・・・かわりが・・・なぃ」
顔が熱い。
「あ、ぁりがとぅ」
顔は見れないが・・・海南もきっと真っ赤なんだろう。
「でも、少し遠くに行ってしまった気がするなぁ」
「・・・」
いろいろ話し込んで帰る。
今まで話したことも無いようなことを。
すべての隙間を埋めようとするように。
すべてのことをお互いに知ってもらうように。
お互いがお互いを知るがために。
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