翌日
ラストシーンを撮る。
夜の公園で二人がセリフを言って抱き合うシーン。
「すまなかった、今まで」
「・・・」
「お前の大切さが・・・やっと解った」
「遅いよ、もう」
「わかってる、わかってるけど!」
「私たち、もうおしまいなんだよ」
「・・・」
「別れたほうが・・・いいんだよ」
「海南・・・」
「なんで、なんでいつも海南って呼ぶの?」
「え?」
「おい篤、海南ちゃんセリフ間違えてるで」
篤は止めようとする雄一郎に手を出してとめる。
「このまま行く」
「でも」
「・・・そのまま回す」
「私はね、身体が弱くて昔から男の子が怖かった」
「ああ」
「でもね、私だって女なんだよ、彼氏だって欲しかったし、普通に遊びに行ったりしたかったんだ」
「ああ」
「なんで夕菜って呼んでくれないの?」
「・・・」
「他人みたいだよ」
「そんな」
「星野君、私のこと好きじゃないように思っちゃうよ」
「・・・」
「私、自分に自信ないから・・・星野君を星野君って呼んじゃうんだ」
「・・・」
「星野君が、ずっと海南って呼ぶから」
「・・・」
「私のことそんなに好きじゃないって思っちゃうから」
「そんなこと・・・」
「私、もうきっと居なくなっちゃうよ」
「・・・」
「病気、なおらないよ」
「・・・」
「星野君は私の愛した初めての人・・・だったんだよ」
「・・・過去形かよ」
「・・・」
「もう過去形になっちまったのかよ・・・」
「そうなのかもしれないね」
「馬鹿野郎!名前で呼んで欲しけりゃいくらでも呼んでやる!俺だってな、自分に自信がねぇんだよ!! 海南とつりあい取れるように頑張ってたんだ、けっこう背伸びしてんだよ!」
「・・・」
「病気に負けんなよ、最後まで頑張ってくれよ、いつだって俺がそばにいるからさ」
「・・・」
「お互い気取るのはやめよう、カッコつけるのもやめよう」
「・・・」
「死ぬまでお前を愛してやる、夕菜」
「天斗・・・くん」
「くんはいらねぇ・・・」
「てんとぉ」
「二人で一緒に歩いていこうや」
「・・・」
「頼りねぇ俺だけど、すぐにふらふらしちまう俺だけどよぉ」
「・・・」
「俺は、お前がいなきゃどこに歩いて良いかわかんねぇんだよ」
「・・・」
「俺には夕菜が必要なんだよ」
「・・・」
「そばで笑っててくれよ」
「・・・」
「それだけでいいから」
「・・・」
ふらふらと海南が歩み寄ってくる。
「海南っ!」
抱きかかえる俺。
「だめだよてんと・・・ゆうなって・・・いってよ」
海南は俺に倒れ掛かってきた。
「ゆうなっていってくれなきゃ・・・」
「しっかりしろ、夕菜」
俺の腕で目をつむる海南。
「いままでありがとう・・・・・・てんと」
「ゆうなーーーーーーーーー!!」
撮影を止め、皆が海南に駆け寄る。
「演技だよ」
笑っているが、やや顔が青い。
本当に疲れたんだろう。
篤は涙を流している。
「ごめんね、吉田君、話途中で忘れちゃって勝手に・・・」
「最高だった、最高だったよ海南ちゃん」
結局そのまま使うことになった。
さらにラストも話を変え、海南がいなくなってしまい、俺が園田のジョッキーになる話に変更。
翌日園田にまた撮らせてもらいに行き、篤と潤也が徹夜で編集して映画は完成。
文化祭3日前に完成したのだった。
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