「ごめんね、入試前に」

「そんなのどうでもいい」

「星野君」

「なんだ?」

「今までありがとうね」

「何言ってんだよ、海南」

「去年の秋からすごく楽しかったよ」

「おい、海南って!」

「クリスマスも、修学旅行も、夏の海も・・・」

ここは海南の話を聞くことにした。

「学園祭も楽しかった、いつもそばには星野君がいてくれた」

「俺が横にいたかっただけなんじゃないか?」

「それならもっと嬉しいよ、私が初めて好きになって付き合った人なんだもん」

「それらしいことは何も出来なかったけどな、悪いな」

「星野君はいつも私に合わせてくれたんだよね、ごめんね」

「海南が謝る事は何一つない、俺は去年から結構楽しかったし、ずっと助けてもらっていた」

「それは違うよ、私が助けてもらったんだよ」

「いや、テストもそうだし、クラブもそうだ、第一俺に将来の指針を与えてくれた、やっとやりたい事が見つかったんだ。 医者になって子供を助ける。 俺にはまだ海南が必要だ」

「・・・」

「この夢の横には海南がいなきゃ意味がないんだ。 俺の夢には海南が必要なんだ」

「ありがとう」

「俺一人じゃどう歩いて良いのかわからねぇ、海南と一緒じゃなきゃ・・・」

「そんな事はないよ、星野君は私なんか居なくたってきっと夢を叶えるし、きっと私より良い人が現れるよ」

「俺は・・・」

沈黙

「俺は信じる、海南が良くなることを」

「・・・」

「海南が、医者があきらめたって俺は最後まで信じる」

「私、今日から多分ずーっと会えないよ」

「関係ない」

「きっと二度と会えないよ」

「そんな事は信じない!」

「私ね、今日星野君と会えたらお別れしようと思ってたんだ」

「・・・」

「海南が別れたいんなら・・・仕方がないけど」

「けど?」

「俺は、待ってる」

「海南が俺を嫌いになって別れるってんならいつだってあっさり身を引いてやる、でも海南が何かに遠慮してなら・・・俺は・・・・・・」

「60になったって80になったって待っててやる」

「ありがとう・・・」

気づいたら外は真っ暗だ。

「海南」

「ん?」

「ずっと待ってるからな」

「うん」

「何があってもあきらめないでくれ」

「うん」

「ごめんな、無力で」

「ううん、いつも力貰ってるよ」

「海南の病気、俺が治せたら良いんだけどな」

「そこまでは持たないよ」

「だから医者に任せる、俺は何も出来ないから・・・せめて最後の最後まであきらめないから、ずっと待ってるから」

「ありがとう」


電気も付けない暗い病室で

いつもの病室で


初めてのキスを交わした。



自分の無力さに憤りを感じ

自分の言葉の足りなさに憤りを感じて家路に着いた。