自転車(名前 リザーブユアハート号)を駐輪場に置き、教室に行く。
階段を上り、いつものクラスじゃなく、
2年1組と書いた教室のドアをくぐり、適当な椅子に座ろうとする。
がすううう!!
ハデな音とともに後頭部付近に激痛を感じる。
「早かったじゃん天斗」
と子供ん頃から聞き飽きた声が聞こえてくる。
「・・・ってー、なにすんだ!美幸!!」
後ろからカバンで殴ってきたのは幼馴染の川端 美幸だ。
「だって、せっかく起こしに行ったのに起きなかったじゃん」
「は?」
「・・・まさか昨日起こしに来てくれっていったの忘れたんじゃないでしょーね」
ちょっと怒り気味の美幸。
・・・おもいだした。
そういや昨日電話で言った気がする。
それで本当に起こしに来てくれてたようだ。
ぜんぜん気付かなかった。
「ほんとに起こしに来てくれたのか〜?」
「起こしたよ!!」
「どうやって?」
「声かけても起きなかったから鳩尾に一発入れて、まだダメだからこめかみ10秒押してあげたよ」
・・・
それ、起きあがれなかったんじゃないか。
どうりで腹と頭が痛いはずだ。
「お前なー、女なら女らしく優しく出来ねーのか!!」
「起こしてもらってそれはひどいじゃないか!」
「普通幼馴染ってのはもっとこう甘露で淫靡な雰囲気があってもいいもんだ!なのにテメーはなんで俺より男らしいんだ!」
「うるさい、じゃあ明日から自分で起きろ!」
「なんだとーー!」
「はい始めるぞーー」
そう言って教師が入ってくる。
そこで戦争を辞め、席に着く。
やがて補習用のプリントが配られ、最初の30分はそれに向き合う。
わからん
わかるはずが無い。
わかるんならこんな所に来るはずがない。
周りを見ても頭を抱えてるやつばっかりだ。
かりかりかりかり
をいをい、文字をすらすら書いてるヤツがいるよ。
そのほうを見る。
美幸だ。
コイツは頭がいいくせに(学年トップ)この補習に志願したという奇妙奇天烈な行動をしやがったんだった。
聞くと
「予備校行くより安いじゃん」
だそうだ。
・・・また勉強の質が全くと言って良いほど違うと思うんだが。
予備校行ってるヤツより成績がいいんだからいいんだろうけどな。
俺だったら間違いなく家で寝てるぞ。
こんこん
後ろからつついてくるやつがいる。
隣のクラスの、そして同じ同好会の雄一郎だ。
「おい、天斗、お前わかるか?」
「わかるわけないだろーが」
「あ〜あ、はよ終らんかな〜、なあ、終ったら競馬行こうぜ」
「そーだな」
雄一郎は「競馬同好会」を創立した友だ。
ちなみに雄一郎の自転車は「イナズマタカオー号」だ。
きーんこーんかーんこーーん。
やっと補習が終わり、雄一郎と約束を交わし、いったん家に帰る。
帰りは下り坂だから楽なもんだ。
リザーブユアハートはこがずとも勝手に進んでいく。
やがて坂は終わり、自然に減速していく。
止まるあたりがちょうど交差点で、今日は運が無く信号に引っかかってしまった。
暑いのに運が無いな。
この交差点は引っかかると長いのだ。
フラフラとあたりを見回す。
前には喫茶店。
涼しそうだな、休んでいくか・・・
いや、この金を勝負金に回してだな。
横には中央病院。
俺にはまったく縁の無いところだ。
しかし高い建物だな。
これだけ部屋があっていっぱい客じゃない、患者が入ってんだろうな。
儲かってんだろーなー。
医者にでもなるかな。
・・・この季節に学校呼び出されてる程度じゃ無理だわな。
しかし、病人も大変だーねー。
と病院を見上げる。
ふと3階を見たあたりで一人の女の子と顔があった。
どこかで見た気がする。
向こうも気付いたらしく、頭をぺこりと下げる。
あ、ああ
俺も釣られて頭を下げる。
なんだかかわいい子だな。
・・・
見つめ合ってるみたいで、なんだか気まずくなって顔を戻した時、信号が緑色に変わっていた。
渡りに船とばかりにペダルをこぎ、進行方向を家へと向けた。
・・・どこかで見た気がするんだけど、誰だったか。
まあいい、別に・・・女なんざ。
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