悲しいかな俺は魂を単位で売ってしまった。
職員室の前にたたずむ俺。
「何してんだ重役、さっさと入れよ」
校長の高橋が言う。
校長まで俺を重役と知っていたのか。
案外有名人なのかと少し気楽に入る。
「しつれーしまーす」
「重役、来年の担任は俺だな」
1年A組の担任の今井が話しかけてくる。
「やなこった」
「よう、重役、今日は何した?」
「重役、生きてたか」
「死んだって聞いたぞ」
「お、退学じゃなかったのか?」
・・・2年の担任の席が一番奥なので、いろんな教師に話しかけられるんだが、ろくな会話の内容が無い。
気楽に入ったはずが、担任の前に来る時には顔に縦線が入るくらい沈んでいた。
「よう、星野」
「うっす」
「やっぱ来たか、釣られたな」
「ああ、釣られたな」
「で、今日呼んだのはな」
「ああ」
「さ来週、共通学科のテストだぞ」
「は?」
「実力テストだよ、お前、これか次の中間、期末どれかでも終わったら終わるぞ」
「マジか?」
「コレがウソではお前釣るために餌は付けんだろ」
「まあそらそーだな」
「お前、1学期どのテストも受けなかったからな、2学期やばかったら来年も二年だな」
・・・やヴぁい。
「少なく見積もっても2つやばかったら落第だろーな」
・・・かなりやヴぁい。
「お前、特進で上がってきたろ、今年計算したら・・・」
「したら?」
「俺の計算では中間終了時点でドボンだな」
「マジかよ」
「マジだ」
・・・どうしようもなくやヴぁい。
「いったい何点くらい取ればいいんだ?」
「そうさなー、どれかで平均80点以上、あとを最低平均70以上でなんとかだな」
・・・壊滅的にやヴぁい。
「第一、特進の条項の中の条件、『ある程度の遅刻、欠席』超えてるしな」
「どうすりゃいい?」
「死ぬ気で勉強することだな」
「試験問題を俺だけに1時間前にくれるとか言う特典は?」
「馬鹿」
・・・・・・
9月に落第決定はヤバいだろ。
とぼとぼと自転車をこがずに押して帰る。
「ふーーん、来年は後輩か〜」
美幸の言葉が何度も繰り返し頭に響く。
ウチの学校には「特進制度」と言う物がある。
遅刻欠席がある程度度を越えていても成績が良く、国公立大に合格しそうなラインの成績ならダブらずにすむのだ。
俺はそれ以下だが、「特進条項第二条」の、
「心身病弱にある者さらに若干の考慮を配す」
にかかり、1年は何とか特進で上がったのだ。
それなのに・・・
9月でアウト決定かよ―――!
それはいかん。
なんとかせねば。
第一俺、そうなったら2月の修学旅行はどうなるんだ?
2回は行けないしな。
2学期から休学状態か?
むー、それはイカン、考えねばならん。
・・・とは言っても勉強する以外何も近道は思い当たらない。
しかし俺もサボリキングとしてそうやすやすと勉強するわけには行かない。
何か他の方法は無いだろうか。
家に帰って通販雑誌を見る。
・・・睡眠学習法・・・
ドアホ!結局勉強するんじゃねーか!
それも大好きな睡眠中にまで。
俺は勉強せずに成績を上げたいんだ!
何か無いかなー、
「アタマヨクナール」みたいな薬とか・・・
いや、副作用が怖そうだな。
なんかないかなー。
タイの聖米のパワー・・・
あやしい。
そして何より胡散臭い。
他に何か無いのか。
無いか。
無いよなあ。
あったらみんなノーベル賞受賞してるわな。
ぬー、じゃあ何があるんだ〜〜。
あるわけも無く、勉強する事にした。
ああ、無駄な抵抗せずに早くしてりゃ良かったさ。
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