翌朝

今日は早めに学校に行く。

いくらテストでいい点をとっても、時間数が足りなければ意味が無いからな。

俺のリザーブユアハート号は軽快に走っている。

障害物も無く、坂も上りきる。


自転車置き場にハートを置き、学校内に入る。

「また遅刻か、重役」

長谷川が言う。

失礼な、こんなに早く来たのに。

「一般的には遅いんだよ、10時だぞ、今」

俺の中では早いと思ったんだが・・・そうだ、いつも大人はわかってくれないんだ。


いろんなやり取りをしながら教室に着く。

ちょうど休み時間だったのが幸いし、何事も無かったように席に着く。


・・・はずだった。

いつも通り頭に爆音と振動と激痛が走る。

美幸が今日もカバンを振り下ろした。

「・・・」

「死んだか?」

「生きてるよ!!」

「残念だ」

「いつか殺す」


普段通りのやりとりを繰り返し、終礼も終え、帰ろうとしたときだけがいつもと違った。


「おー、星野、20分後に職員室来い」

担任の山本が言う。

「天斗、お前とうとう落第か?」

雄一郎が言う。

「縁起でもねえ事言うなよ」

とは言った物昨日今日の話だからな、かなり不安だ。


不安を抱きつつ職員室に赴き、山本の前に行く。

「来たか」

「ああ、で、何だ?」

「おお、あのな、女子の石田が転校したろ?」

「・・・石田?」

「クラスメイトくらい覚えてくれよ」

「・・・いた気がする」

「転校したんだよ」

「残念だ、最後に顔くらい見たかった」

「やっぱり覚えてないんじゃないか」

・・・

「でな、石田がずーっと海南にプリントやら提出物を持って行ってたんだけどな」

「・・・み・・・なみ?」

「石田覚えてないくらいだもんな、俺が悪かった、説明しよう」

「すまん」

「去年の特進、お前ともう一人居たんだ」

「ほう」

「それが海南 夕菜、女子だぞ」

「ほう」

「これがまた成績がかなり優秀でな」

「へー」

「ただ時間数が足りないんだ、まあ試験が学年一位だからな、とりあえず特進だ」

「うらやましい話だ」

「・・・お前も特進じゃないか」

「そう言えばそうだった」

「でだ、まだ海南は病院に居るんだ、だから石田が持ってってくれてたんだが」

「転校したから持って行く奴が誰も居ないって訳だな」

「そうそう」

「めでたしめでたし」

「めでたないわい!」

教師につっこまれた。

「でだ、お前これから毎日届けに行ってくれ」

「なんだって?」

「だーかーらー、お前が海南の所にプリント持ってけって言ってんの」

「断る」

「えらくあっさり言いやがるな」

「毎日学校に来る保証はないし、強制は嫌いだ」

「あ、じゃあいいのか?」

「何がだ?」

「特進制度第4条、学校、教師、生徒に多大なる貢献をした者に、この条項を当てはめるものとする」

・・・

「いらんのか?」

「そ、それしたら進級出来そう?」

「ま、毎日続けば可能性は大きく広がるだろうなあ」

「・・・そのお役目、わたくしめにお任せいただきとうございます」

「いや、嫌だったら雄一郎にでも任せるから」

「いえいえお代官、わたくしが、天斗めがさせて頂きます」



・・・・・・罠にはめられた感は否めないが、悪い取引ではない。

俺はこの取引を受ける事にした。