雄二が画面を見ると…


【〜着信中〜 貴志】


雄「貴志かよ…」

─ピッ!

雄「もしもし?」

貴「…私だ」

雄「そんな、どっかの地下組織のボスみたいな会話の切り出し方やめれ。」

貴「ぬぅ、俺のキャラにケチつけんのか?」

雄「アホか。で何の用だ?」

貴「ん?大した用じゃないんだが、バイト代も入ったことだし暇なら飲みに行こうかと思ってな。」

雄「ああいいぜ。今、沙織ン家の近くのガストに居るから来いよ。」

貴「一人居酒屋ならともかく一人ガストとは、寂しいやつだな。」

雄「アホ、沙織もいるよ。」

貴「んだよ、なら邪魔しちゃいけねーから今度でいーや。」

雄「そんなんじゃねーよ。なんか話があるからって呼び出されただけだ。せっかくだし三人で飲みに行くベ。沙織にも伝えとくから。」

貴「…話ねぇ。ならなおの事誘えねぇな。他当たるわ。じゃーな。」

雄「え?おい!」


─ツーツーツー


雄「なんだアイツ?」

雄二は頭に疑問符を浮かべながら用を足すと席に戻るとすでに沙織は戻っていた。

沙「遅かったね。」

雄「なんか貴志から電話があってな、飲みに行こうって。」

沙「は?あたし制服で行けるワケないじゃん。」

雄「着替えりゃすむだろ?家近いんだし。それに、沙織といるって言ったら今度にしようだってよ。」

沙「あっ、そう。」

沙織は内心ホッとする。

雄「まぁ、そんなワケだから気にすんな。そんな事より、そろそろ本題に入ろうや。」

沙「うん、そうだね。」

雄二は席につく。

雄「で?話っつーのはなんだ?」

沙「んー。あんたさぁタメでA組の神楽って知ってる?」

雄「A組の神楽?あの女ったらしの神楽か?」

沙「うん。」

雄「その神楽がどうしたよ?」

沙「神楽が最近つきまとってる女の子がいるの知ってる?」

雄「知らない。オレ、あんなヤツと関わり無いもん。」

沙「そう。実は神楽が最近つきまとってる女の子が困ってるから何とかしてほしいのよ。」

雄二の顔が少し険しくなる。

雄「つまり、『別れさせ屋』やれってーのか?」

沙「…うん。」

雄「やだ。もう辞めたんだ。もともと、ただのストレス解消だしな。」

沙「そこを、なんとかお願い。」

雄「だいたい『別れさせ屋』辞めろって言ったのお前だろ?」

沙「だって、神山君のこと聞いたらあまりにもヒドイと思ったから…」

〔神山 充〕沙織にラブレターを出した弓道部の二年生である。





─四ヶ月程前─


雄「おい、沙織。」

沙「どうしたの?」

雄「お前、弓道部の神山からラブレターもらったって?」

沙「なんで、それ知ってんのよ?」

雄「美咲に聞いたんだよ。で、付き合うのか?」

沙「あたし、好きな人いるから、その気はないけど…。どう断ろうか迷ってるんだよねぇ。」

雄「へっ?お前好きな男いたんか?」

沙織は雄二の言葉にうろたえるが後の祭だった。

沙「えっ!あっ、いや、その…」

その時、雄二から発せられた言葉は予想外のものだった。

雄「なら、俺がなんとかしてやろうか?」

沙「はい?」

沙織は意味がわからず呆然とする。

雄「だから、俺が何とかしてやるって。」

沙「えっ?そんなのいいよ。」

雄「いーから。任せろよ。」

雄二は返事も聞かず走っていく。

沙「ちょっと、雄二!」




雄二は神山のクラスに押しかけた。

雄「いよう、神山。」

充「ん?北川。何の用だ?」

雄「ちょっと、屋上まで付き合ってくれや。」

充「ああ、いいよ。」

二人は屋上へ移動する。

雄「単刀直入に言うぞ。沙織はやめとけ。」

充「な!なんでお前がその事知ってるんだよ!だいたい、お前にはカンケーないだろ!」

雄「俺がなんで知ってるかはこの際どうでもいい。ただ沙織はやめた方がいい。」

充「ウルセー!お前にはカンケーないって言ってるだろ。だいたい、お前は東さんの幼なじみってだけだろ。」

雄「幼なじみだから言ってんだよ。あのな、沙織には許婚がいるんだ。」

充「なっ!」

雄「だからやめろって言ってんだ。」

充「…」

雄「その相手ってのが大企業のお坊ちゃんでな。」

充「…」

雄「沙織の親父さんの取引先の社長なんだ。」

充「…」

雄「そのお坊ちゃん、典型的な親の七光りで会社継いだワガママ小僧なんだ。」

充「…」

雄「接待の席でたまたま見せた写真で沙織がエラク気に入ったそうだ。」

充「…それで東さんは?」

雄「…その話をうけたよ。高校卒業したら嫁ぐ事になってる。」

充「…」

雄「アイツにとって恋愛は、もう諦めた日常なんだ。」

充「…」

雄「…未練を残させないでくれ。…頼む。」

充「…わかったよ。」

雄「わりぃな。この事は沙織には黙ってて欲しい。あくまで何も知らずに諦めて欲しい。」

充「ああ、俺は何も聞いてない。俺は東さんがなかなか返事をくれないから、俺に気が無いことに気付いて身を引くんだ。」

雄「…ありがとう。すまんな、こんな所に呼び付けて。」

充「気にすんな。こっちこそ、ありがとう。」

充は雄二に頭を下げると屋上の扉に向かう。

ドアノブに手をかけたところで振り返る。

充「なぁ、北川。もしかして…」

雄「…言ったろ?未練を残させないでくれって。」

充「…そうだったな。」

充は屋上を出て行った。雄二は扉が締まるのを確認するとニヤリと表情をくずす。

雄「…楽勝だな。」





沙「…あとから美咲に聞いて、フォローしたからいいようなものの、お人好しで人を疑わないの知っててあんな嘘はさすがにヒドイよ。」

雄「相手の弱点を突くのは兵法の基本だ。」

沙「あんたのは外道って言うのよ。」

雄「まぁ、あれは流石にやり過ぎたかなって今では反省してる。」

沙「…でも、神山君に謝ってないでしょ?」

雄「だって神山のヤロー人の話聞く耳もたねーんだもん。」

沙「当たり前でしょ!」

雄「もういいじゃねぇか。誤解は解けてるんだしよ。」

沙「そうゆう問題じゃないでしょ!神山君の事だけじゃなくて、その後あんたのやってた事も問題なのよ!」

雄「…貴志の一件か?」

沙織の表情が一変する。

沙「…そうだよ。…あれ以来、あの子男性不審気味になって大変だったんだから。」

沙織の言うあの子とは〔安藤 奈津美〕剣道部の二年生で貴志に熱を上げてた女の子である。

雄「あれは安藤に問題があったんだよ。」

沙「そうゆう問題じゃない!他にやり方あったでしょって事を言いたいの!」

雄「お前はあの件について何も知らないから、そんなことが言えるんだよ。あれはな…」




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