─三ヶ月程前─
貴「雄二。」
雄「あん?なんだ?」
貴「ちょっと俺を助けてくれないか?」
雄「お前が俺に助けを求めるとは珍しいな。梅雨も明けたのに明日は嵐だな。」
貴「冗談言ってる場合じゃねぇ。マジで困ってんだからよ。」
雄「ほう、とりあえず聞いてやろう。」
貴「とりあえずじゃ困るんだが、まぁいい。うちのクラスの安藤なんだがな…。」
雄「安藤がどうしたよ?」
貴「あいつとは中学の頃からの付き合いなんだが、とにかくしつこいんだよ。」
雄「ほうほう、ならいい事を教えてやろう。付き合えばいい。顔も可愛いし明るくていい娘じゃねぇか。」
貴「…てめえは何も知らんからそんな事が言えんだよ。」
雄「その言い方だと、お前は何か知ってるみたいだな。」
貴「知ってるみたいじゃなくて実際に知ってるんだよ。中二ん頃アイツと付き合ってたんだから。」
雄「…なーんか、面倒な展開になりそうだからあんまり聞きたくなくなってきたな。」
貴「そういわねーで聞いてくれよ。これは友人としての相談じゃなくて『別れさせ屋』に依頼なんだからよ。」
この頃の雄二は腐ってた。いつも何かにイラつき破壊衝動に駆られ、ストレスの発散先を求めていた。
どこから情報が流れたのか、神山の件で雄二には別れさせ屋の依頼が来る様になった。
最初は依頼者も冗談半分だったがストレス解消も兼ねて依頼を受けているうちに、いつの間にか本格的な『別れさせ屋』として有名になっていた。
そんな理由から、雄二はこの話を聞かないわけにはいかなくなった。
雄「しょうがねぇな。話してみろや。」
貴「まぁ、今言った通り中二の頃俺は安藤と付き合ってたんだが、とにかく束縛がヒデーんだ。」
雄「たとえば?」
貴「他の女と話すだけでキレるわ、見るだけでもふてくされるわ、雑誌に載ってるグラビアに可愛いとか言うだけでも機嫌悪くなるんだぜ。」
雄「ふーん。」
貴「でな、部活の後輩の女の子の練習に付き合ってたんだが、そのせいでその娘が安藤に八つ当たりされるようになっちまってな。」
雄「ところでお前部活なんかやってたんか?」
貴「ああ、剣道やってたよ。まぁ、その事がきっかけで辞めたんだがな。」
雄「なんでよ?安藤と別れれば済んだんじゃね?辞める必要なくねぇか?」
貴「お前甘いな。そんな時に別れてみろ。安藤の頭ん中じゃその後輩のせいで別れたことになっちまうだろうが。そうしたら八つ当たりはますますひどくなるだろ?」
雄「なるほど、あの安藤がそんなにイタイ女だったんか?」
貴「その後輩ってーのがまたやる気があって才能もあったからな。そんな事で潰しちまうには惜しかったワケよ。俺は別にそこまで剣道に打ち込んでたワケでもないしな。」
雄「…で、その後どうなったんだ?」
貴「まぁ、その後も安藤の束縛は止まらなくてな。中三になる前に別れたんだ。それでも、アイツ『そんなの認めない』とか言っていまだに言い寄ってくんだよ。」
雄「おまえは、約二年もそんな状態放置してたのか?」
貴「んー、ぶっちゃけ中三の時は放置してたな。あいつ一応、中二で個人戦県大会準優勝だったし。。大方推薦で高校行くだろうと思ってたしな。」
雄「ウチは一応進学校だから部活推薦枠無いしな。」
貴「高校違えば、接点が無くなるし、何とかなるだろうと思ってたワケよ。」
雄「でも、ウチにいるって事は推薦を蹴ったワケだ。」
貴「きっちり俺を追い掛けてきたんだよ。」
雄「見ようによっては、一途でいい娘だな。」
雄二は意地悪そうに笑う。
貴「…てめえ、冗談でもそうゆうこと言うな。あそこまで行くとある意味ストーカーだぞ。」
雄「で?高校入ってからは、何とかしようとしたワケ?」
貴「したんだが、どうにもならん。何を言っても『愛情の裏返し』にしかならねーんだ。」
雄「…イタイな。」
貴「だろ?」
雄「なるほど状況は把握した。ようはお前に付き纏わないようにすればいいんだろ?」
貴「まぁ、そうなんだが…」
雄「まだ何か問題でも?」
貴「それがな、あまりにしつこいもんだから『もう彼女いるからつきまとうな』って言っちまったんだよ。」
雄「愚かな。余計面倒な事になってるじゃねーか。」
貴「わかってる。いった瞬間ミスったと思ったよ。」
雄「どーすんの?おまえ独り身だろ、彼女役いんの?」
貴「だから、お前に言ってるんだろ?」
雄「…まさか、俺に女装しろと?」
貴「死ね!」
雄「たかちゃん、ヒドイよぉ。」
貴「キモッ!」
雄「キモッ!とか言わない!わかってるよ、ちょっと待ってな。身代わり見つけてやるから。」
雄二は携帯をとりだすと、メールを飛ばす。
─5分後
─ピリリリ!
雄「よっしゃ!Hit!」
貴「なんで、わかんだよ。」
雄「心あたりなければ返信不要って入れといたからな。返信あったらOKってワケだ。…あっ、写メ見る?」
貴「写メまであんのか?」
雄「返事は写メ&プロフィール付きで送ってくれって頼んだからな。」
貴「なんで写メとプロフィールが必要なんだ?」
雄「お前は曙みたいな女を彼女として紹介したいか?そういう趣味の人だと思われたいなら止めんが…」
貴「それはゴメンだ!」
雄「だろ?なら写メは必須だ。」
貴「プロフィールは何故、必要なんだ?」
雄「お前が付いた阿保な嘘を真実にするためだよ。嘘は付き通せば真実になるんだよ。なら、ノリがよくて演技できる子じゃないとな。」
貴「…お前、頭切れるな。」
雄「まぁな。」
貴「これで、何で勉強が出来ねぇんだか。お前こないだのテスト、平均40点とか言ってなかったか?」
雄「ふん、俺はあの時は実力の5%も出しちゃいない。」
貴「…消費税分くらいはだせよ。それに残りの95%はどうした。」
雄「残り95%は有意義な学校生活のために使用中だ。」
貴「…バイトや麻雀や成功しないナンパに95%か?明らかに力量配分間違えてるな。大体5%も出さずに40点なら13%も出せば100点確実じゃないか。」
雄「…気がつかんかった。」
貴「アホだな。取りあえず話を戻そう女の子はどうなった。」
雄「ぬぅ、アホとは失敬なヤツだな。しかし、この写メを見てもそんな口が聞けるかな?」
雄二は勝ち誇ったように携帯をみせる。
雄「…名前は井上智子。近くの私立高校に通う三年生で演劇部の部長。二年の終わりに彼氏と別れて現在フリー。明るく人懐っこい性格でノリがいい。顔は見ての通りかなりの美人。身長は162センチ。スリーサイズと体重はヒミツだがモデル顔負けのスタイルの持ち主。」
貴「…ごめんなさい。今までの数々の暴言をお許し下さい。」
雄「わかればよろしい。とりあえず、今日の放課後時間あるか?」
貴「ああ、今日はバイト休みだ。」
雄「ならちょうどいい。実際に会って、計画をたてよう。」
雄二はメールを送ると携帯を閉じた。
貴「ああ。それにしても段取りが早いな。」
雄「これも有意義な学生生活の一環だからな。」
貴「…だてに95%も注ぎ込んでねぇな。」
雄「だろ?」
雄二は底意地の悪そうな笑みを浮かべる。
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