雄「後はわかるよな?あの日はお前もいたんだから。」

沙「…うん。」

雄「たしかに、あの日の智ちゃん先輩はやりすぎかなって気もしたがそうでもしなきゃ安藤は引かなかったのも事実だろ?」

沙「奈津美ちゃんがそこまでしつこくしてたのは知らなかったよ。」

雄「まぁ、安藤からしか話を聞いてなかったんだから、それは仕方ないんだろうが。」

沙「それにしたって、他に方法は無かったの?」

雄「安藤が貴志にフラれた時に潔く諦めてりゃ、今頃はいい友達やってたんじゃないか?」

沙「相変わらず女心のわからない男だね。そんなんだから、彼女が出来ないのよ。」

雄「そういわれると返す言葉がないが、俺だって多少なりとも安藤を気遣ってはいたんだぜ?」

沙「あんたまで一緒になって焚きつけといて、どこに気遣いがあったのよ!」

カッとなった沙織は声を荒げる。

雄「こんな事言うとお前が気を悪くすると思うが、お前を巻き込んだのはそこなんだ。」

沙「どういう事よ?」

雄「いや、お前安藤と仲いいじゃん?だから、うまくフォローしてくれるんじないかなって思ってたワケだ。性格的にあーゆーのほっとけないし。」

沙「じゃあ、あたしが奈津美ちゃんを慰める事を計算してたとでも言うの?」

雄「ああ。これでも、お前を信頼したうえで出来るだけ安藤も傷つかない方法をとったつもりなんだが。」

沙「つまり、あたしまで利用してたワケ?」

雄「そんな言い方すんなよ。元はといえば貴志が彼女がいるなんて嘘をつかなきゃこんな事しなくてよかったんだから。」

沙「人のせいにするんじゃないわよ。」

雄「そんなつもりは無いが、貴志があんな事言うからこんな方法しかなかったんだよ。そう考えたらフォロー役はお前しか頼れなかったんだよ。」

沙「…わかった。奈津美ちゃんの事は奈津美ちゃんにも原因があったのと、一応あんたがあんたなりに気遣かってはいたことは認めるわよ。」

雄「まぁ、今となっては『別れさせ屋』もやめたし、認められなきゃ認めなくてもいいよ。やっぱり、人の恋路に首突っ込むのは良くないしな。」

話が一区切りついたところで雄二はグラスに口をつけると、氷が熔けて薄くなったコーラを一口飲む。

雄「というワケだから、別れさせ屋の依頼ならもう請けないぞ。」

沙「そこをなんとか請けてくれない?」

沙織は両手を合わせて頼み込む。

雄「なんでだよ。やめろって言ってたのはお前だろ?」

沙「今回ばかりはあんたに頼んででも何とかしたいのよ。」

雄「わかったよ。とりあえず詳しく話してみろ。聞くだけ聞いてやるから。」

沙「今回は神楽に狙われてるのが美咲なのよ。」

その一言で雄二の顔付きが変わる。

雄「美咲が?その話マジか?」

沙「マジじゃなきゃ頼まないわよ。」

雄「…そうか、神楽のヤローが美咲狙いとはな。なら仕方ねぇ、別れさせ屋期間限定で復活だ。」

沙「さすが雄二、昔っから美咲にはあまいね!」

雄「…そんなんじゃねぇよ。これで最後だからな。」

沙「当たり前でしょ。狙われてるのが美咲じゃなかったら頼まないし、まだ『別れさせ屋』続けるならあんたをブン殴ってでもやめさせるわよ。」

雄「…いまさらどうでもいい事だが、仮にも女子高生がブン殴るとか言うなよ。色気がねぇ。」

沙「何か言った?」

沙織は鞄に手を入れる。

雄「バカ!こんなとこで三節棍だすな!」

沙「なら、口には気をつけなさいね。」

雄「…すみません。」

沙「わかればよろしくてよ。」

雄「さて、そうと決まれば即実行だな。今何時だ?」

沙「んー。もうすぐ6時ね。」

沙織は腕時計を見て答える。

雄「ちょうどいいな。あと30分で空手部の練習が終わる。じゃあ、そろそろ出るか。」

雄二はコーラを飲み干すと席を立つ。

沙「えっ?もう出ちゃうの?」

沙織は残念そうに聞き返す。

雄「ああ、そろそろ行かなきゃ神楽に会えんからな。今日中にケリつけてやるよ。」

沙「別に今日じゃなくてもいいじゃない。まだ6時だしカラオケでも行かない?付き合ってよ。」

雄「カラオケ?最近行ってないしいいねぇ。」

沙「でしょ?」

雄「…って言いたいところだけど、善は急げって言うからよ。」

沙「…そっか。」

沙織は渋々席を立つ。

雄「ワリィな、お詫びに今日はおごってやるからふてくされるなよ。」

沙「え?そんなご機嫌取りなんかしなくてもいいよ。別にふてくされてもいないし。」

雄「そうか?ならいいが。まぁ、元々おごるつもりだったし、気にすんな。男なんだからおごらないと絵的にカッコ悪いだろ?ちゃんと次はカラオケでもボーリングでも付き合ってやるよ。」

沙「…あんたにそんな気の利いたセリフ似合わないよ?」

言葉とは裏腹に沙織は嬉しそうに答える。

雄「ケンカ売ってるか?」

沙「そんな事ないよ。ありがと♪」

今度は素直にニッコリ笑いながら答える。

雄(いつもそれくらい素直ならカワイイのにな。)

沙「どうかした?」

雄二の表情に沙織は首を傾げる。

雄「なんでもねーよ。いくぞ。」

雄二はレジに向かう。

雄(まぁ、素直な沙織は逆に気味ワリイけどよ…)

そんな事を考えながら会計を済ませると店を出る。

雄「じゃあな、結果は明日教えるよ。」

沙「うん。あんまりえげつない事しないでよ?」

雄「わかってるよ。」

そう言い残すと雄二は学校に向かった。

そんな雄二を見送ると沙織はため息をつく。

沙「ちぇー。せっかく雄二とデート出来ると思ったのに。」

それでも雄二の言葉を思いだし気を取り直す。

沙「まっ、今度付き合ってくれるって言ってたし、いっか。」

そう呟くと沙織は足取りも軽やかに帰路についた。



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