第三章
『神隠し』
─校門前
人影もまばらになった校門前に雄二は立っていた。
雄「そろそろ来る頃だな」
校舎の方から目的の人物が歩いてくる。
雄「おう、神楽」
涼「…北川、貴様こんなところで何してる?」
雄「おー。さわやかな好青年が売りの神楽君が貴様なんて下賎な言葉を使うとは、驚きだねぇ」
涼「質問に答えろ」
雄「せっかちな奴だな。しょーがねー、単刀直入に言うぜ。ちょっとツラ貸せや」
涼「フン。いいだろう」
雄「ついてきな」
そのまま二人は近くの河原の橋の下に移動した。
涼「河原に呼び出すとは、思考が昭和だな」
雄「べつに、停学になりたきゃ人目につくとこでもいいんだぜ」
涼「それはゴメンだ。そんな事より用件を言え。僕も暇じゃない」
雄「安心しろ、どう転んでも長くはならねぇ。まぁ、簡単に言えば美咲にこれ以上付きまとうなって事だ」
涼「やはりその話か。東に頼まれたんだろ?女の尻に敷かれて言いなりとは、情けない男だな」
雄「それは違うな。俺は『別れさせ屋』。依頼を受けたから動いたまでだ」
涼「人の恋路に首を突っ込むとは趣味が悪いな」
雄「女と見れば見境なく手をつけたがるお前にゃ言われたかねぇな」
涼「フン。見境なく壊しにかかる恋愛テロリストが偉そうに」
雄「恋愛テロリストときたか。しかしお前は、まるでわかっちゃいないな。『別れさせ屋』は依頼が無ければなにもしないし、依頼は選ぶ。無差別に壊したことは一度もない」
涼「口先で何を言っても一緒だ。やってることは、くされ外道以外何者でもない」
雄「別にお前と議論する気はサラサラねぇ。答を聞かせてもらおうか」
涼「ふん、断る」
雄「まぁ、そう来ると思った。だがさっきも言った通り手短に済ませたいからな」
雄二は上着を脱ぐ。
雄「構えろ。そしてオレが勝ったら美咲に近づくな」
そういうと雄二は構える。
涼「なら僕が勝ったらお前も東も邪魔しないでもらおうか」
涼も上着を脱ぎ構える。
雄「いいだろう、来な」
その言葉を合図に涼は雄二に襲い掛かる。
涼「ハッ!」
涼の右下段回し蹴りを雄二は下がってかわす。
涼「セイッ!」
その下がったところを狙いすましたように涼の左上段正拳突きが追撃する。
雄「フンッ!」
その正拳を雄二は右半身を引いて左手で捌く。
涼「クッ!」
涼は捌かれた左手を引きながらその円運動に合わせて雄二の左脇腹へ右中段回し打ちを放つ。
雄「ホッ!」
雄二はその回し打ちをバックステップでかわし距離を取る。
雄「空手部次期エースは伊達じゃないらしいな。だが、少し遅い」
涼「そんな事いってる余裕がお前にあるのか?」
雄「あるさ」
そのまま一気に間合を詰めると涼の顔目掛けて左の突きを繰り出す。
雄「フンッ!」
涼「くっ!」
涼は顔を反らし避ける。
雄二はそのまま左手を引きながら左足を踏み込み、左肘を突き出す。
─ガキッ!
肘は涼の右こめかみにヒットする。
涼「がっ!」
雄二は構わず左肘を振り抜くとその回転を殺さず顔面目掛けて右の裏拳を叩き込む。
─ゴスッ!
涼「グアッ!」
それでも雄二は止まらない。
雄「ハッ!」
裏拳を振り抜きその勢いで左中段回し蹴りを下段から斜めに蹴り上げるように涼のミゾオチにブチ込む。
─ドボォ!
涼「ゲホッ!」
涼は膝を付き激しくむせる。
雄「…決まりだな。二度と美咲に近づくな」
雄二は膝をついた涼を冷たい眼で見下ろし静かに言い放つ。
雄「これ以上、美咲につきまとうなら次は腕の一本は覚悟しとけ」
雄二は上着を着るとそのまま帰路についた。
涼はしばらく動く事もできなかった。
辺りはすっかり暗くなり夜の戸張が降りていた。
涼「…僕が負けた?そんなバカな」
涼「…なぜだ、なぜあんなヤツに」
涼「…北川の野郎許さん!どんな手を使ってでも殺してやる!!」
涼「……力だ!力が欲しい!」
その時、空に大きな赤い流星が横切る。その数は次第に増えていき流星雨となる。
まるで、涼の言葉に呼応するかのように…
涼「うおぉぉぉぉーーーー!!!!」
その流星雨に応えるように涼が叫ぶと涼の体は赤い光りに包まれた。
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