母「雄二ーー!!起きなさーーい!起きないと遅刻するわよー!!」
…しーん。
返事はない。
母「また?毎朝毎朝しょうがない子だねぇ」
母親は階段を駆け登る。
ダダダダダダッーーー!!!
バーンと勢いよくドアを開けると、あいかわらずだらしない寝顔をした馬鹿息子の姿が目に入る。
母「…はぁ。やれやれ」
ため息を一つついてから構える。
母「破っ!」
─ドボォ!!
鈍い音と共に海より深い母の愛は、ミゾオチに深く深くめりこんだ。
雄「…っ!」
雄二は声も出せずに悶える。
雄「…ゲホッ!」
ようやく落ち着くと咳き込みながら母親を睨む。
雄「殺す気かー!」
母「そんな事ないわよ。海より深い母の愛よ」
雄「海より深い母の愛で息子を深い眠りにつかせる気か?」
母「バカねー。それならもっと確実な方法とるわよ」
雄「…」
母「いいから早くしないと遅刻するわよ」
雄「…了解」
また、いつも通りの朝を迎えた。
雄「…チキショー、まだミゾオチがイテェ」
雄二はミゾオチをさすりながら学校に向かう。
沙「ゆーじー!!!」
後ろから沙織の声がする。どうやら追い掛けてきたようだ。
雄「おう、おはよう」
雄二は振り返ると挨拶をする。
沙「挨拶してる場合かー!」
─スパーン!
雄「はうっ!」
沙織は雄二の顔面を丸めた新聞でひっぱたく。
雄「朝っぱらから何しやがる!」
雄二は鼻の頭を赤くして抗議する。
沙「何しやがるじゃなーい!あんたこそ何をしたー!」
雄「何をした?なにがだ?」
沙「これを見なさい!」
沙織は雄二に新聞を渡す。
雄「なになに?『S○NY&H○NDA人型アンドロイドの開発に成功、メイド型アンドロイドの開発に着手した事を発表!人格プログラム開発の為K○NAMIが共同開発チームに参入!』?…すげーな、これ」
雄二はうれしそうに沙織に聞き返す。
沙「誰がそんな記事読めって言ったー!」
─バキィ!
雄二の顔面に沙織の鞄がメリ込む。
雄「あうち!」
沙「その下の記事!」
雄「何すんだよー。どれどれ?」
ブツブツ言いながら新聞を読む。
雄「『高校生四人行方不明!』これがどうした?」
沙「名前見てみなさいよ!」
雄「えーっと『神楽 涼(17)』…なんだと?」
沙「あんた昨日何したのよ?…はっ!まさか、殺じ…」
雄「やってねー!」
沙「じゃあなんで、あんたに関係ある人ばっかり行方不明になってるのよ?」
雄「関係あるってどういう事だよ!」
沙「記事をよく読みなさい!」
沙織に促され雄二は記事をさらに読む。
雄「えー『神山 充(17)・安藤 奈津美(17)』…なんだってー!」
沙「あんた何したのよー!」
雄「何もしてねぇー!偶然だ!証拠に四人目の『秋山 秀幸(18)』なんて奴シラネーもん!」
沙「嘘いいなさい!あんた昨日あたしと別れたあと何をした?!」
雄「嘘じゃねぇ!あの後はすぐ学校に向かって…」
雄二は涼との一件を全て話した。
雄「…で、そのまま家に帰ったよ。7時半頃家に着いた。なんならお袋に聞いてみろ」
沙「…」
沙織は無言で携帯電話を取り出すと電話をかける。
雄「…?」
沙「…あっ、もしもし東です。…ちょっと、聞きたいことがあって。…ええ、雄二の事なんですけど、昨日何時頃に帰ってきました?…あっ、そうですか。わかりました」
雄「…」
沙「…いえ、たいした事じゃ無いんですけど。…あっ、はい任せてくださいよー」
雄「……」
沙「…いえいえ、変な事聞いてすみませんー。…はい、じゃあ失礼しますー」
沙織は電話を切る。
沙「どうやら、本当みたいね」
雄「…本気で疑ってたんか」
沙「あはは、ゴメン」
沙織は笑ってごまかす。
雄「…あはは、じゃねーよ」
沙「そう言わないでよ。昨日の今日でこの記事見たら、誰だってそう思うじゃない」
沙織は開き直る。
雄「…確かに偶然にしてはおかしい」
沙「でしょ。ホントに『秋山 秀幸(18)』って心当たりないの?」
雄「…どうしても、俺を犯人にしたいのか?ホントに知らねーよ」
沙「そういうワケじゃないんだけど、三人に共通点が無いんだもん」
雄「『秋山 秀幸(18)』ってのが共通の知り合いとかじゃねーの?」
沙「うーん、そうかなぁ」
雄「だいたい、俺らが悩んだところでどうにもならないだろ。これだけ事件になってんだ、警察がなんとかするって」
沙「あんた意外と冷めてんのね。クラスメートが行方不明だってのにさ」
沙織は不機嫌そうに不満を漏らす。
雄「心配してなくは無いが、俺らが出来ることなんか無いのも事実だろーよ」
沙「そうだけどさー」
雄「ほら、遅刻すんぞ」
そう言うと雄二は学校に向かって走る。
沙「ちょっと待ってよ」
沙織も雄二を追って走りだした。
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