─昼休み─
雄二が学食から戻ると、朝は居なかったはずの悪友の姿を見つける。
雄「おう、重役出勤とはいい御身分だな貴志」
貴志は寝ぼけた顔で振り向く。
貴「んー?雄二か。昨日寝てねーから今日はサボろうと思ったんだがな」
雄「進級できなくても知らんぞ」
貴「てめーと一緒にすんな。俺はおめーと違ってきちんと出席日数計算して『有休』取ってんだよ」
雄「ものは言いようだな。大体、昨日寝てないって何してたんだよ?」
貴「べつに。お前が飲みに行かないから智子さん達と飲みに行っただけだよ」
雄「『達』?二人っきりじゃなくてか?」
雄二はニヤニヤ意地の悪い笑みを浮かべて聞き返す。
貴「アホ。省吾さんと他に女の子が一人いた」
雄「ふーん。最近ずいぶん智ちゃん先輩達と仲いーじゃん?」
貴「省吾さんが『女の子紹介しろ』って言うから紹介して、よく四人で遊ぶようになっただけだよ」
雄「あの人は相変わらずだなぁ」
貴「そんなことよりおまえはどーなんだ?」
今度は貴志がニヤニヤ意地の悪い笑みを浮かべて聞き返す。
雄「別に。日々是平和也ってとこだな」
貴「ワケ分からん事言ってごまかすんじゃねぇよ」
雄「何を?」
貴「昨日、東とデートだったんだろ?詳しく聞かせろよ」
雄「何言ってんだ、そんなんじゃねーよ」
貴「照れんなよ。いーから聞かせてみな」
雄「おめーは何を期待してんだ?オレと沙織に何かあるワケ無いだろ」
貴「隠すな、隠すな」
雄「死ね!大体…」
─ピンポンパンポーン
『二年C組 北川雄二 至急生活指導室まで来なさい。繰り返す、二年C組 北川雄二 至急生活指導室まで来なさい。』
雄「…あの声、担任の藤村じゃねぇか。なんだ、一体?」
貴「…お前何した?」
雄「わからん、記憶にねぇ」
貴「…これが同級生として交わした最後の言葉だった」
雄「縁起でもないナレーション入れんな。ちょっと行ってくる」
貴「おー。停学程度で済めばいいな」
雄「死ね!無罪で初の停学喰らってたまるか」
雄二は捨て台詞を吐いて生活指導室へ向かった。
─生活指導室
雄「…なんか、無罪でもここ来ると緊張するな」
─コンコン
覚悟を決めると雄二はドアをノックする。
雄「北川、来ました」
『開いてるから入れ』
中から担任の声がする。
雄「失礼します」
一声かけて中に入る。
藤「おう、来たか」
雄「用件はなんですか?」
呼び出された理由がわからず雄二は神妙な面持ちで聞く。
藤「あー、硬くならんでいいぞ。お前がなんかやったとかじゃないから」
それを聞いて雄二は安心する。
雄「なんだよ、緊張して損したわ。じゃあ、なんの用?」
藤「…いきなり普段の態度になりやがったな」
雄「藤やんと俺の仲じゃん。で、なによ?ゲームの攻略とか言うなら勘弁だぜ」
藤「アホ。そんなんならこんなとこ呼び出さんで直接うちに呼び出すわ」
雄「それもそうか」
藤「…とりあえずこの新聞を見ろ」
雄「なんだよ。行方不明事件なら知ってるよ」
藤「そうか、お前何か知らんか?」
雄「しらねーよ」
藤「お前が昨日、A組の神楽と会ってるのを見たんだが」
雄「べつに、大した事はしてねー。ちょっと話しただけだよ」
藤「そうか、やっぱり無関係か」
雄「やっぱりってなんだよ」
藤「アホか。これでも担任教師だぞ。お前が問題起こすかどーかなんか普段の態度を見てりゃわかる」
雄「なに、信用してくれてんのか?」
藤「まー、そういうことだ。教室に戻っていいぞ」
雄「あいよー」
雄二が生活指導室をでようとすると、担任は呼び止めた。
藤「あっ。そーだ。お前も気をつけろよ」
雄「なんだよ。俺が次の被害者だとでもいうつもりか?」
藤「そういうわけじゃないが、なんか悪い予感がしてな」
雄「あんたは占い師か?」
藤「そーじゃないが、昔から俺の悪い予感はよく当たってな」
雄「へーへー、気をつけますよ」
そう言い残すと雄二は教室にもどっていった。
─放課後─
雄「あー、だるー」
首をコキコキ鳴らしながら、雄二は校門をでる。
雄「まーったく、皆この手の噂好きだねぇ」
今日一日いろいろな憶測や噂が校内を飛び交った。
四角関係の痴情のもつれから始まり、あげくの果てには集団自殺だの、某国に拉致されただの、変な宗教に走っただの、数え上げたらキリが無い。
雄「週刊誌も真っ青な内容だぜ、今時『東○ポ』だってもっとまともな記事書くっつーの」
雄二はブツブツ文句を言いながら首を捻るとコキッ!といい音がなる。
雄「なーんか、疲れちったなー、バイトだりー」
雄二は文句を言いながらバイト先へ急いだ。
─その夜
―ピリリリッ
雄二の携帯が鳴る。
雄「あん?電話?誰だ?」
雄二が画面を見ると…
【〜着信中〜 浩兄】
雄「浩兄から?珍しいな」
─ピッ!
雄「もしもし?」
浩「雄二か?」
雄「俺のケータイにかけて俺以外に誰が出るんだよ?」
浩「いちいち、揚げ足とるな。そんな事より美咲お前ん家に行ってないか?」
雄「来てねーよ」
雄二が壁に掛けてある時計を見ると、11時を差していた。
雄「だいたい、幼なじみとはいえこんな時間に人の彼女を部屋にあげるワケないだろ?」
浩「…それもそうだな」
雄「美咲がどうかしたのか?」
浩「美咲のおばさんから『美咲がまだ帰ってこない』って連絡があったんだよ」
雄「なんだと?!沙織ん家は?」
浩「真っ先に連絡したが、沙織のケータイ繋がんないんだ」
雄「マジか?!わかった、とりあえず俺も捜してみる」
浩「ああ、わかった」
─ピッ!
雄二は電話を切ると、服を着替え家を飛び出した。
雄「こういう時、人数は一人でも多い方がいいな」
雄二は携帯を取り出す。
『おかけになった電話は電波の届かない場所…』
雄「貴志のヤロー、こんな時に限って…。智ちゃん先輩とイチャこいてるんじゃあるめーな」
連絡のつかない悪友に悪態をつきながら電話を切る。
雄「そーだ、とりあえず沙織に連絡を取ってみるか」
『おかけになった電話は電波の届かない場所…』
雄「やっぱり圏外か。ったく、何してんだあのバカ!」
雄二は悪態をつきながら、携帯をポケットにしまうと、闇雲に探し回った。
駅前、近くのファミレス、商店街、近所の公園…
思い当たる場所を次々に回るがどこにもいなかった。
途中、浩輔に連絡を入れたが返ってくる返事は「NO」だった。
そして、貴志と沙織は何度かけても圏外だった。
気付くと、雄二は河原に来ていた。
『おかけになった電話は電波の届かない場所…』
もう何度目かわからないメッセージを聞くと雄二は電話を切る。
携帯の時計は【0:32】と表示していた。
雄「なんで、貴志と沙織は繋がんねーんだ?」
『お前も気をつけろよ。』
『昔から俺の悪い予感はよく当たってな。』
昼休みに担任が言った言葉が頭をよぎる。
雄「まさか、三人とも事件に巻き込まれたんじゃ…」
そこまで言いかけて頭を振る。
雄「いくらなんでも、こじつけもいいとこだ。落ち着け、俺」
自分を落ち着かせるように天を仰ぐ。
空には雲一つ無く、星が煌めいていた。
その星空を切り裂くように一際大きな流星が流れたとき、雄二の頭の中に声が響く。
『北の守護神に選ばれし魂の持ち主よ、ここに来たれ!』
雄「…っ?!」
雄二はその言葉に反応する間もなく、視界は真っ白な光に包まれ何も見えなくなった。
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