雄「…うっ!」
雄二が目を覚ますと見覚えの無い天井が見えた。
雄「ここはどこだ?」
間違いなく自宅では無い事だけは確かなようだ。
雄「…そもそもなんで俺寝てるんだ?」
そう呟くと体を起こし辺りを見渡す。
薄布で出来た蚊帳、その向こうに見える質素な板張りの壁、ユラユラ揺れるロウソクの明かり。
雄「…俺は夢でも見ているのか?」
状況の把握が出来ない雄二はおもむろに拳を握ると自分の額をなぐった。
─ゴチッ!
雄「…いたい。って事は夢ではないらしいな。」
最初から夢と決めつけていた雄二は思惑が外れ戸惑うと同時に自分が混乱していることに気付く。
雄「とりあえず落ち着け、俺。」
自分にそういい聞かせ深呼吸をする。
雄「俺は美咲を探しに家を飛び出して、河原まで来て…。」
雄「……………………」
─五分後
雄「あー!もう、わけわからねー!大体ここどこだよ!」
雄二は頭を掻きむしる。
雄「こういう時は…そうだ素数を数えるんだ。」
そこに一人の女性が入って来た。
雄「2・3・5・7・11・13・15…じゃねえ、17だ。」
「あのー。」
雄「どわー!」
話し掛けられるまで気付かなかった雄二は悲鳴を上げる。
「お目覚めになられたようですね、守護神様。」
雄「あんただれ?」
「申し遅れました。私は守護神様に仕える巫女、名をコクヨウと申します。」
そう名乗るとコクヨウは深々と頭を下げる。
雄「コクヨウさん?」
コ「はい。」
雄「えーっと、話が見えてこないんだけど…、守護神様って?」
コ「あなた様の事でございます。」
雄「はい?俺?」
コ「はい。さようでございます。」
雄「…。」
話の展開についていけない雄二はおもむろに自分にビンタする。
─バチーン!
コ「な、何をしてらっしゃるのですか?」
雄「…いたい。って事は夢じゃないのか。」
そう呟くと雄二は黙り込む。
コ「あ、あの守護神様、どうなさいました?」
雄二の行動の真意を掴めず、コクヨウは恐る恐る問い掛ける。
雄「…えーっと、とりあえず何で俺が守護神様なのかを説明してくれないかな?」
コ「それはですね…。」
「それはわたくしからお話致しますじゃ。」
コクヨウが言いかけたところで、呪術師が部屋に入ってくる。
コ「ホクシ長老様!」
ホ「守護神様、わたくしこの北甲の国の長老ホクシと申します。」
雄「はぁ。で、俺が守護神様ってのはどういう事なんですか?」
ホ「この世界『幻世(おぼろよ)』は今、異形なる者が溢れ混沌の世になりつつあります。」
雄「おぼろよ?」
ホ「さよう、守護神様のおられた世界『現世(うつよ)』と死後の世界『黄泉の世』の狭間の世界でございます。」
雄「つー事は俺は死ぬの?」
ホクシの説明に雄二は慌てるが、ホクシは首を振り否定する。
ホ「そうではございません。幻世は現世の精神世界と考えていただきとうございます。」
雄「精神世界?」
ホ「さよう。現世と黄泉の世の理を護り、均衡を保つ神々と聖霊のすむ世界。それが幻世でございます。」
雄「で、さっきも聞いたけど俺が守護神ってのはなんで?」
ホ「先程もお話しました通り、今この幻世は異形なる物が溢れ、混沌の世と化しております。」
雄「それで?」
ホ「その混沌を納める事が出来るのは、幻世と現世を支える四方神でございます。」
雄「四方神?」
ホ「はい。東西南北を守護する四人の神の事でございます。」
雄「だから、なんでおれなのよ?」
ホクシの回りくどい言い方に苛立ってきた雄二は言葉を荒げる。
ホ「四方神は幻世の現世の秩序と均衡を守護する為に、魂を現世に封印され転生を繰り返します。」
雄「それが俺だってーの?」
ホ「さようにございます。」
雄「そう言われても、確証もないのに信用できねぇよ。」
明らかに疑惑の眼差しを向ける雄二にホクシは躊躇うことなく話を進める。
ホ「儀式により幻世に召喚されたのが何よりの証にございます。守護神様でなければ現世より、生身で幻世に来る事は出来ませぬ故。」
雄「それだけじゃなぁ。そもそも、ここが幻世って言うのもよく解らないし。」
ホ「では、目に見える形で証を見せましょう。…コクヨウ。」
コ「はい。」
コクヨウは懐から黒い珠のはめ込まれた指輪を取り出す。
コ「守護神様、これを。」
言われるままに、雄二はその指輪を手に取る。
雄「…っ?!」
指輪にはめ込まれた黒い珠は雄二の手に納まるとぼんやりと光を帯びる。
コ「この玄甲珠は守護神様の魂の器。故に守護神様の魂の波動に反応します。」
黒い珠のはめ込まれた指輪・玄甲珠の光は徐々に強くなる。
コ「そして、その波動により玄甲珠はの封印は解かれ、混沌の世を打ち砕く神器となると伝えられております。」
そう言うとコクヨウは両手で印を結ぶ。
コ「我、北方の守護神が巫女コクヨウの名において命ずる!」
コクヨウの言葉に応じ、胸の前で印を結んだ両手が光を帯びる。
コ「主の波動を受けて悠久の封を解き、目覚めよ!神器【武砕拳・亀甲手】!」
両手の光と共鳴するように玄甲珠の光はますます強くなる。
コ「『放珠』!」
コクヨウの言葉と共に玄甲珠は光を炸裂させる。
雄「うわっ!」
その光に雄二は目を閉じる。
次へ