雄「…これは?」
光の炸裂が収まり雄二が目を開けると、雄二の両手には亀の甲を模した、手甲が装着されていた。
コ「神器【武砕拳・亀甲手】でございます。」
雄「いや、名前を聞いてるわけじゃなくて、この物体は何なの?」
ホ「守護神様の魂の器である神器にございます。」
雄「神器?」
コ「魂は現世で転生を繰り返し、神通力は神器に封印され幻世で巫女の元に代々伝承されてまいりました。」
ホ「そして、現世と幻世の崩壊の危機に魂と器の融合が実現されたのです。」
コ「守護神様、どうか現世と幻世の秩序と均衡をお守り下さい。」
ホクシとコクヨウは雄二の前にひざまづく。
雄「…そういわれても、俺はただの十七のガキだぞ。そんなガキに何が出来るんだ?」
目の前で起きる奇怪な現象に対処しきれなくなった雄二はとうとうキレた。
雄「いいから、俺を帰してくれ!」
ホ「…それは、我等の力では無理でございます。」
雄「なんでだよ!アンタが俺を呼び出したんだろ?」
ホ「我等が守護神様を呼び出す事が出来たのは、それが定められし運命だったからでございます。」
雄「じゃあ、俺がここに居るのは運命だったってのか?」
ホ「さようにございます。」
雄「ふざけんな!俺はフツーの高校生なんだ、運命なんて知るか!俺を日常に返せ!」
ホ「帰る方法ならございます。」
雄「どーやんだよ?」
ホ「伝承によれば、混沌の世が治まったとき、守護神は再び眠りにつくと言われております。」
雄「つまり、俺が守護神の役目を果たせば帰れるって事か?」
ホ「さようにございます。」
雄「…言ったろ、俺はただのガキだ。そんなの無理に決まってるじゃねぇか。」
雄二がうなだれると、それまで黙っていたコクヨウが口を開く。
コ「…出来ますよ。その神器には神通力が封印されていました。その封印が解かれた今、守護神様には神通力が宿っています。」
雄「神通力?」
コ「はい。口で説明するより実際に見ていただいた方がよろしいですね。こちらへどうぞ。」
コクヨウはそう言うと庭に出ていく。
雄「ちょっと、どこ行くんだよ。」
雄二もコクヨウに続いて庭に出ると、コクヨウは大岩の前に立っていた。
コ「この岩を砕いてください。」
雄「んな事出来るか。」
コ「強く念じれば出来ます。神通力は想いの力。想いが強ければそれだけ強い力が引き出せます。」
コクヨウは雄二を真っ直ぐに見据えて答える。
雄「…わかったよ。」
コクヨウの真っすぐな視線に、雄二は観念すると大岩の前で腰を落とし構える。
雄「…。」
そのまま静かに深く息を吸うと目を閉じ念じる。
雄(…砕けろ、砕けろ、砕けろ…)
雄二の想いに応えるように亀甲手は淡い光を宿す。
雄「…っ!」
雄二は目を見開き大岩に突きを放つ。
雄「砕けろぉー!」
─ドゴォ!!
激しい音と共に大岩は無数の小石と化した。
雄「?!」
コ「神通力を信じていただけましたか?」
コクヨウは優しく微笑む。
雄「…信じるしかねぇじゃん。」
コ「守護神様、改めてお願い申し上げます。幻世と現世の秩序と均衡をお護り下さいませ。」
雄「…わかったよ。どっちにしろそうしなきゃ俺は帰れねぇんだから、やるだけやってみるよ。」
雄二の返事を聞きホクシが声をかける。
ホ「では、出発は明日にして、今日はおくつろぎ下さい。今、守護神様の降臨を祝う宴を用意しております故。」
雄「…それはいいんだけどさぁ。」
雄二は言いづらそうに口を開く。
コ「どうかなさいましたか?」
コクヨウは不安げに尋ねる。
雄「コレ、外せないんだけど…。どうやって外すの?」
雄二は亀甲手を指差す。
コ「…。」
ホ「…。」
雄「…。」
コ「…。」
ホ「…。」
雄「…呆れてないで外してくれ。これじゃ飯食うのにも邪魔でしょうがねぇ。」
コ「そ、そうですね。いま外します。『封珠』!」
コクヨウの言葉に亀甲手は元の玄甲珠に戻る。
コ「では守護神様、参りましょう。」
雄「ちょっと待った。」
城の中に戻ろうとするコクヨウを雄二が引き留める。
コ「なにか?」
雄「その『守護神様』って堅苦しいから止めてくんないかな?雄二でいい。」
コ「かしこまりました。雄二様。」
そう言うとコクヨウは城の中に入っていった。
雄「様はいらないって。…って言っても無駄なんだろうな。」
雄二はそう呟くと頭を掻いた。
雄「…面倒な事になっちまったなぁ。」
そのまま雄二はコクヨウを追って城の中に入っていった。
空には満天の星が輝いていた。
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