第四章
『旅立ち』



─翌朝

ホ「まずは、大陸中央の聖獣山を目指すとよいでしょう。山頂には四方守護神の長、唯一絶対神の奉られた神殿、聖央神獣殿があります故。」

雄「聖央神獣殿?そこは異形な者とかいうやつらに陥落させられたんじゃねぇの?」

前夜の宴の際に幻世の状況を知った雄二は当然の疑問を口にする。

ホ「その通りでございます。ですが聖央神獣殿の最深部には四方守護神の封印が施された、四方守護神以外何者も近寄れぬ祭壇があります。」

雄「そこに唯一絶対神がいるんだな?」

ホ「そこまでは解りません。しかし、唯一絶対神の手掛かりはあるはずでございます。」

雄「なんだかあやふやで頼りねぇな。」

雄二は頭を掻きながらため息を漏らす。

ホ「申し訳ございません。我等一族に伝わる古文書にも詳しく記されておりませぬ故。…ですが」

雄「ですが、何?」

ホ「南翼の国・東牙の国・西爪の国にも我等の一族の異界門解放の儀により幻世に降臨した守護神様がいるはずでございます。」

雄「その全員が聖央神獣殿に集まるって事?」

ホ「さようにございます。それぞれの地で四方守護神様を召喚し聖央神獣殿に導くのが我等一族の代々伝わる使命にございます。」

コ「そして、神器を守り守護神様に従事するのが我々巫女の一族にございます。」

それまで、ホクシの後ろに控えていたコクヨウが口を開く。

コ「四つの神器と四人の巫女により四方守護神は封を解かれ、唯一絶対神降臨の鍵となると伝えられております。」

雄「って事はコクヨウさんも来るの?」

コ「はい。守護神様を聖央神獣殿まで案内するのも巫女の役目でございます。」

雄「危なくないか?」

コ「ご安心下さい。私も巫女として呪術の心得がございます。それに…」

雄「それに?」

雄二の心配にコクヨウは控えめながら堪えきれない笑いを漏らす。

コ「雄二様は聖央神獣殿までの道のりをご存知なのですか?」

雄「…そういえば、そうだったな。」

当然の指摘を受け雄二は頭を掻く。

雄「…ところで、聖央神獣殿まではどれくらいかかるんだ?」

ホ「聖獣山の麓まで馬で駆けて三日ほどですが、あいにく偵察の軍が壊滅した際に軍馬を全て失ってしまったため馬がおりませぬ。」

雄「まぁ、馬が居たところで俺乗れねぇしな。…って事は徒歩か。」

ホ「徒歩となりますと、馬の通れぬ森を抜けられますので距離は近くなりますが、獣道ゆえ四日ほどかかるでしょう。」

雄「なるほど、コクヨウはその道わかるの?」

コ「はい。それに地図もありますし、いざとなれば呪術で式神を使えば迷うことはまずありません。」

雄「なら、大丈夫か。じゃあ、そろそろ出発するか。」

雄二はホクシ達の準備してくれた食料や夜営道具の詰まった袋を背負う。

コ「あっ、雄二様が持たなくても私が持ちます。」

雄「えっ?なんで?結構重いよ、これ。」

コ「だからです。守護神様にそんなもの持たせる訳には参りません。」

雄「そんな気遣いはいいよ。他の守護神達と合流するまで二人で旅するんだから、もっと気楽にいこうぜ。」

コ「しかし…」

雄「ほら、肩の力抜いて。今から気を張ってたら疲れんぞ。」

コ「…わかりました。」

雄「よし。ホクシさん、ちょっくら行ってくるわ。」

ホ「守護神様、御武運を。」

コ「ホクシ様、行って参ります。」

ホ「うむ。守護神様の力になってまいれ。」

コ「はい。」

雄二とコクヨウは挨拶を済ませると旅立った。





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