何もない草原を二人はひたすら南に向かい歩き続ける。

雄「ねー、コクヨウ。」

コ「どうしました?」

雄「さっきさ、今夜眠れるかどうかは俺次第みたいな事を言ってたじゃん?」

コ「はい。言いましたよ。」

雄「その『地精霊式神術』って一晩で会得できるものなの?」

コ「普通ならむりでしょう。巫女である私も会得するまで半年を要しました。」

雄「マジかよ?そんなの一晩どころか四日でも足りねぇんじゃねぇか?」

コ「雄二様には出来ると思います。」

雄「やっぱり守護神だから?」

雄二の質問に少し考えてからコクヨウは答える。

コ「それもありますけど、先程の異形な者を倒した時に全身が闘気に覆われていたのを覚えてますか?」

雄「いや、夢中だったから覚えてない。」

コ「あれはまがなりにも神通力を発している証拠です。」

雄「自分ではよくわかんないけどな。」

コ「神器が守護神の魂の波動に触れ目覚めつつあるのでしょう。おそらく今夜の内に自分の意思で制御出来ると思います。」

雄「…できるかなぁ。正直自信無いぞ。」

コ「大丈夫ですよ。雄二様は守護神様なんですから。」

雄「そう言われてもなぁ。本人にあまり自覚が無いからな。」

雄二の自信の無い返事にコクヨウは諭すように返す。

コ「昨晩も申し上げたように神通力は想いの力です。想いが強ければ出来ますよ。」

雄「守護神としての自覚が無いのに強い想いがあるのかな?」

コ「考え方の違いですよ。雄二様は現世に帰りたいのでしょう?」

コクヨウの言葉に雄二は現世に想いを馳せる。

雄(そういえば昨日のゴタゴタで考えてるヒマなかったが、元々は美咲を探してたんだよな…。)

コ「…雄二様?どうかしました?」

コクヨウは急に険しい表情で押し黙った雄二に問い掛ける。

雄「ああ、俺は向こうでやらなきゃならないことがある。それに…。」

コ「それに?」

雄「…大事な人がいる。だから俺は向こうに帰らなきゃ。」

コ「…そのためにはどうしなければいけないか、解りますよね?」

雄「守護神の使命を果たす。」

そう答えると雄二はコクヨウを真っ直ぐに見据える。

コ「その意志があれば大丈夫です。さぁ、もうすぐ草原を抜けます、行きましょう。」

雄「ああ!」

気持ちを新たに二人は歩く足を早める二人の眼前には、高く木々が立ち並ぶ森が見え始めていた。

雄「あの森を抜けるのか?」

雄二は歩きながら森を指差しコクヨウに問い掛ける。

コ「ええ。ですが今日はあの森の前で夜営します。」

雄「なんで?まだ日も高いし、時間がないんじゃないのか?」

コ「危険だからです。異形なる者が草原に出没してるとなると、森では遭遇する可能性がさらに高いです。」

雄「でも、明日朝一で出発して、一日で抜けられるのか?」

コ「まず、無理です。普通に進んでも三日はかかります。」

雄「なら、結局は森の中で夜営するんだろ?なら今日進んでも同じじゃないか?」

コ「その森の夜営を見越しての事です。」

雄「どういう事?」

コ「雄二様が『地精霊式神術』を会得すれば交代で結界を張れます。ですから、今日は早めに休んで夜の儀式に備えます。」

雄「なるほど。」

コ「それに異形なる者が出没する可能性を考えれば昼も危険です。」

雄「じゃあ、森を抜けようがないじゃねぇか。」

コ「昼は二人で『地に掛かる橋』を掛けて森の上を越えます。夜になったら交代で結界を張って夜営すれば安全にしかも予定より早く抜けられるはずです。」

雄「一石二鳥ってわけか。」

コ「はい。ただし、雄二様が今夜中に『地精霊式神術』を会得することが条件ですが。」

雄「会得出来なかったら?」

雄二は当然の疑問を問い掛ける。

コ「その時は迂回するしかないでしょう。雄二様が神器と神通力を使いこなせない状態では、危険過ぎます。」

雄「でも、さっきは倒せたじゃん?意外といけるんじゃない?」

コ「単体で襲われてあれだけ手間取ったんです。もし複数で襲ってきたら対処するのは無理ですよ。」

雄「複数で襲ってくる事なんてあるのか?」

コ「わかりませんが、可能性はあります。」

雄「その根拠は?」

コ「異形なる者は元々は、自然動物の精霊です。狼の様に群れをなす動物が異形なる者に成ったとしたら…。」

雄「なるほどね。」

納得するように雄二が頷き森に視線を移す。

雄(なんか不気味な森だな。)

雄二の視線に写る森には邪悪な気配が漂っていた。

雄(なんか嫌な予感がする…。)

コ「…雄二様?」

雄二の様子にコクヨウは声をかける。

雄「いや、なんでもない。」

雄二はそう答えると足を早めた。





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