─数時間後
日が落ちかけ空が夕焼けに染まり始めた頃、二人は森に程近い丘の上に到着した。
コ「今夜はここで夜営しましょう。」
雄「あいよ、よっこらせ。」
雄二は荷物を置いてその場に腰を下ろす。
コ「…雄二様は十七歳って言ってましたよね?」
腰を下ろした雄二にコクヨウが尋ねる。
雄「ん?それがどうかした?」
コ「…『よっこらせ』って年寄りみたいですね。」
コクヨウは呆れたように言う。
雄「ほっとけ!」
雄二がバツの悪そうに返すとコクヨウはクスクスと笑っていた。
雄「…ホント、イイ性格してるわ。」
コ「あら、ありがとうございます。」
コクヨウは微笑みながらサラっと返す。
雄「…ちっ。イヤミの返しも大したもんだよ。」
ふてくされてる雄二にコクヨウはなだめるように続ける。
コ「ふてくされてないで、寝床の準備をお願いします。私は簡単な結界を張りますから。」
雄「はいよ。」
雄二が荷物をほどき蚊帳を組み立てる。
コ「我、北方の守護神が巫女コクヨウの名において命ずる!」
コクヨウは印を結び術式を唱える。
コ「悠然なる大地の精よ、主に仇なす者を拒む…」
そこに雄二が声をかける。
雄「ねー、コクヨウ。これどうやって組み立てるのー?」
コ「えっ?」
その瞬間地面から伸びた草がウネウネと切られたトカゲの尻尾の様に暴れる。
雄「どわー!」
コ「きゃー!」
コクヨウは慌てて印を組むと術式を唱える。
コ「悠然なる大地の精よ、主に仇なす者を拒む壁となれ!地精霊式神術・第参行の三節!『茨の生け垣』!」
コクヨウの言葉に応えるように周囲の草花は二人を囲む生け垣になった。
コ「ふぅ。」
術が安定したのを確認してコクヨウは印を解くと、雄二の方を向く。
コ「もう!危ないじゃないですか!イキナリ声かけたりして!」
雄「えっ、ゴメン。」
コクヨウの勢いに思わず雄二はあやまる。
雄「で、でも話し掛けた位でそんなに慌てなくても…」
コ「術の永唱中は無防備なんだから気をつけてください。術が安定する前に気を乱すと暴走しますから。」
雄「でも、さっきの戦闘中は大丈夫だったじゃん?」
コ「…戦闘中に気を緩ませる人なんかいないと思いますが…」
雄「…ごもっとも。」
コクヨウの指摘をごまかすように雄二は言葉を続ける。
雄「地精霊式神術ってのはこんな事も出来んのか?便利だな。」
雄二は感心するように声を上げる。
コ「感心してる場合じゃないですよ。雄二様は今夜中にこの術を会得するんですから。」
雄「印を解いても消えないのか?」
コ「一度術が安定すれば、私の精神力が途切れない限り大丈夫です。」
コクヨウは荷物の中から米や干し肉等を取り出す。
コ「さあ、食事にしましょう。水を汲んできますね。」
雄「あっ、俺行ってくる。」
コ「では、お願いします。私は火を起こしておきますから。」
雄「はいよ。」
雄二は水筒代わりの皮袋をもって近くの小川に向かった。
雄「なんかキャンプみたいだな。」
川で水を汲みながら雄二は呟く。
雄「夏休みに皆で行ったっけな。」
そんな事を考える。
雄「…はやくあっちに帰らなきゃな。」
雄二は決意を新たにするとコクヨウの元に戻った。
─数十分後
雄「ごちそうさま。」
簡単な食事を済ませると雄二は手を合わせた。
コ「では、雄二様は一眠りしてください。夜になったら起こしますから。」
コクヨウは食器を片付けながら雄二を寝床に促す。
雄「コクヨウは?」
コ「私は夜の儀式の準備をします。」
雄「俺も手伝うよ。」
コ「いいえ、寝てください。充分な睡眠は精神を安定させるのに重要な事です。」
雄「でも。」
コ「儀式を成功させるためです。」
雄「わかったよ。」
コクヨウに説得され、雄二は寝床に横になった。
雄(そういえば昨日はなんだかんだで眠れなかったっけな。)
そんな事を考えているとあくびがでた。
雄(コクヨウには悪いけど少し休もう。)
雄二は目を閉じるとそのまま寝息をたて始めた。
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