プロローグ






聖人の血の奪取、失敗したそうだな。



ああ



そんな声がこだまする。




予想外だ。



聖人を奪い、すべての祭器をも奪おうと策を用いたのに。


「肝心のブレイクメイスが無いと来たか」


聖人の血は別にいい。


事もあろうかブレイクメイスがまさか同じ場所にあったとは。


「なかなかもう一度とは・・・いかぬぞ、弟」


「わかっているさ、兄よ」



真っ黒に塗られた祭壇の上で二人の男は話し合っていた。



予想外だ。


せめてあの聖人だけは消しておこうと思ったのに。


いや、完全に息の根を止めたはずだ。


あれを復活させることは絶対的に不可能だ。



しかし、奴の生命活動は再び開始した。



何があるというのだ。


多少の失敗は修正できる。


そのための力も持っている。



そうだ、もう一度


そして必ず・・・。





第一章

祭器のゆくえ






「しかし最近のゾンビはいいもん持ってんな〜」


こなが言う。



人間に復活したこなは鎧も何もかもワイバーン騎士団のゾンビから良いのを見繕って持ってきた。


「多少におうよ」ケ


「ま、慣れるだろ」こ


「3M以内に近寄らないでね」に


「あ、俺も」ホ


「え、そんなに臭う?」こ


くさい」に




いまだに気の抜けた会話は続いている。



「ところでどこに行ったら良いんだろう?」ホ


「とりあえずくろねこを殺りに行くんだろ?」こ


「どこにいるんだろ?」ホ


「じゃあとりあえずこの焼け野原の始点のオオサカに行けばいいんじゃない?」に


「ただ」ケ


「ただ、どうした?」こ


「ブレイクメイス取りに、アワジに奴らが向かうことも考えられる」ケ


「確かに」に


「じゃあどうしよう」ホ


「どうしようって、パーティーリーダーなんだからお前が決めろよ」こ


「・・・アワジには向かうだろうけど、クライもシンゴ卿もいるし大丈夫な気がする」ホ


「じゃあオオサカか」ケ


「オオサカには行っても居ない気がする」ホ


「じゃあどーすんだよ!!」こ


「俺だったら・・・ケンタを奪うなり殺すなりする」ホ


「なるほど」ケ


「ただ、すぐには本人は来ない気がする」ホ


「なるほどね」に


「もしくは」ホ


「もしくは?」こ


「すぐに動いてブレイクメイス取ってからその足でケンタ殺すか」ホ


「あたしならそうするだろうね」に


「ブレイクメイスはすぐに移動される可能性があると考えるだろうしな」ケ


「じゃあ一番早いのは何なんだよ!」こ


「くろねこ探して祭器壊すことじゃない?」に


「・・・そうだな、結論から言えばそうだな」


「まず情報が欲しいな」ホ


「確かに」ケ


「じゃあアマのシーフギルド行こうか」に




再度アマに戻る。


さゆりの張った結界によって城、街は無事だったのだけが救いだ。


いつも働いていた城下町なので大体街のつくりは知っていた。


しかしシーフギルドがここにあったとは知らなかった。


まあ、闇の存在なんだし当たり前か。








「盗み、暗殺なんでもやります シーフギルド」



とかの看板があっても嫌だな。



第一シーフギルドにはシーフしか入れない。


にゃんこを先頭にドアを開ける。



「久しぶり」


「よう」


ヒゲ面の「いかにも」って奴ににゃんこは話し出した。


「オオサカなくなっちゃったね」


「お前それで動いてるんだろ」


「まあね、で、なんか無いの?」


「5万円ですごい情報がある」


「ホッホー、5万出しな」


スるように俺の財布を抜き取り、5万円を出す」


「で、情報は?」


「まず相手方はアワジに向かっているな」


「ブレイクメイス取りに行きやがったか!」こ


「ただそのお目当ての品はすでに・・・たしかうきょーとか言ったのがロシニョールにすでに運んだあとだ」


「そこまでわかるのか!」こ


「シーフの情報力をなめてもらっては困る」


ヒゲ面の男は怪訝な顔をしながらこなに向かって言った。


「で、本隊の相手の居場所ってわかるの?」


「それよりお前等、この焼け野原は調べたのか」


「まだ」


「焼けたのはこの近辺だけじゃない、オオサカを中心に焼けているところと焼けていないところがある」


「でもこの辺はオオサカまで直線で何もないって」ケ


「ロッコウ山辺りから見てみな、不気味だぜ」


「不気味?」


「巨大な魔方陣になってやがる、この近辺だけ切れているが、後は立派な魔方陣だ」


「魔方陣!」ホ


「中心はトヨナカ、そこからいきなり炎が上がってそりゃあ1分もかからなかったんじゃないか、完成に」


「じゃあそのトヨナカに行ったら・・・」ホ


「アンタ魔法使いのくせにわかっちゃないな」


「?」


「どこの世界に召喚魔法を魔方陣の中心で唱える馬鹿が居るんだよ」


「そうか」


「大方魔方陣の端っこだろう?」


「確かに」ケ


「うちの魔法のつかえるモンが見たところ、魔方陣の下に当たるところはフクシマのノダ付近だな」


「じゃあそのあたりに行けば」


「と言うことはテメエら、まだヨドガワをガサってないな」


「ヨドガワ?」


「まったくテメエ等役人どもは・・・」


ため息をつかれた。


「オオサカの地理を知っているか」


「そりゃ」こ


「ヨドさえ抑えてりゃ、キョウトだろうがシガだろうが船さえありゃどこでも行けるんだよ」


「確かに言われてみれば」こ


「アワジだって上に登るキョウトに比べりゃあっという間だ」ホ


「そう言う事だ、近辺の地下にアジトがあるって噂だ」


「5万でそこまでしゃべって言いのかい?」


「あまりに物知らずなもんでな、誘導尋問にかかったみたいに喋っちまった、まあいい、早く行って何とかしてくれ、噂が本当だったらシーフも役人も関係なくなる」


「噂?」ホ


「それは200万ほどいただいていいか?」





最後は話をはぐらかされたようになってしまったが、まあ知りたい情報はあらかた聞けた。


礼を言って外に出る。





「奴らのアジトはわかったけど、これからどうしよう」


「それより気がかりなんだが」こ


「何が?」ホ


「祭器運んでるのがうきょーってのがな」こ


「確かに危ないな」ケ


「一応ロシニョール行っとくか」ホ



ロシニョール王国に向かう。


途中ロシニョールの軍隊とすれ違う。


きっとガッセの軍隊と合流して掃討作戦を果たすつもりなのだろう。





・・・


なぜだ?


本来なら祭器を守るためにむしろガッセの軍がロシニョールに行くべきじゃないのか。


「やばいな、ホッホー」ケ


「やっぱりそう思うか」ホ


「どういうことだ?」こ


「祭器が奪われたんじゃないかって事よ?」に


「じゃあ急ごう!」こ





1時間ほどしたら無効から急いで走って来るうきょーを見つけた。


「えらいこっちゃ、ロシニョール城の宝物庫から祭器が奪われた!」う





どうやらまたうきょーが奪われたわけではないらしい。


シーフギルドの情報は本当だったようだ。


「くろねこが来たのか!」こ


「なんか、魔法使いのおっさんやったらしいで」う


「で、その後は」


「第一陣でロシニョール軍の4割の兵をガッセに向かわせた、後の6割でシンゴと松本君と合流したろし王が着陣予定」う


「で、うきょーは?」こ


「カオスらと合流してガッセ正規軍の一団を引き受ける」う


「俺たちはどうすれば・・・」ホ


「ろし王が、ガッセに行って軍会議に出ろって、自分ら見つけたらそう言うようにみんなに言われてる」う


「じゃあガッセに行こう」ホ





結局行ったり来たりだけだった。



俺たちの知らない間に祭器も奪われ、軍隊まで動いている。



ただ俺たちは知らないだけだった。


これから世界が直面する、あまりにも滅茶苦茶なシナリオを。




たった一人の男が世界を変えてしまおうとしている事を。






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