第三章
開戦!!
決戦準備は整った。
おのおのの隊長は陣にすでに戻り、後はしもる王の号令待ちだけだった。
陣は左から順に
オオイシ、いちよん騎士団
ロシニョール騎士魔法団
真ん中にしもる王率いる竜騎士団
俺たちのロシニョール聖騎士団
元こなみる傭兵団
の順になっている。
「いいか!死ぬんじゃないぞ、相手はゾンビ等不浄なる者だ、元あるべき所に返してやれ!」
「おう!」
「第二陣がターンアンデットをかけ続けろ!効果が発揮したのを確認して第一陣はカイザーと攻撃しろ!第三陣はトランスファーメンタルパワーで第二陣の連中に精神力を与え続けろ、第三陣は魔晶石の保持を忘れるな!」
シンゴが叫ぶ。
ロシニョール聖騎士団が気合の入った声で返事をする。
おのおのの陣伝もおのおのの陣形を取っている。
「精神力は若干残しておけ、頃合を見てカイザーを筆頭に突撃をする、二陣三陣ともメイスに持ち替えて突撃を忘れるな、倒れた者の右横の者は必ずキュアーウーンズをかけて回復させろ!逆となりは回復のために時間を稼げ、回復中に攻撃されないようみんなで気を使いあえ!」
「おう!」
「暗黒神の復活をなんとしてでも阻止するのだ、なんとしても無傷で突撃第六部隊を拠点に送り込むぞ!」
「おう!」
「各々の神に祈れ!我等の元に神の加護あれ!」
「おう!」
準備が整った。
すでにオオイシ、いちよん騎士団、元こなみる傭兵団は攻撃を開始している。
しもる王が竜に乗って飛び立て、そして
「総攻撃だ、かかれー!」
そう叫んだ。
いっせいに進軍を開始する軍団。
俺たちはロシニョール聖騎士団の第三陣の後ろにつく。
戦争は始まった。
「今回は相手が人でなくて少し気が楽だな」
こながそう呟いた。
「しかしこれだけの軍勢だ、なかなか巧くは行かないんじゃないか?」ケ
「俺の鍛えた軍団なめるんじゃねえ、カオスも巧く操ってくれているからほとんど無傷だ」
うれしそうにこなは言った。
「うきょーもいるしな」ホ
「ああ、回復が一人いれば何時間だろうが全力で攻撃できるさ」こ
目の前ではターンアンデットで弱ったアンデット達がカイザー率いる第一陣に破壊されていく。
「見事だ」ホ
「カイザーさんって戦士だったんだ」ク
カイザーは両手持ちの大きな斧を振り回している。
「砕くというより叩き壊しているな」ク
「やっぱり俺らよりあの人たちが行ったほうがいいんじゃないのか?」こ
「人には人の戦い方があるのさ、あたしたちが行ったほうが良いってんだから黙って行きゃあいいんだよ」にゃ
「そうだな」ホ
「しかし本当に俺たち何もしなくていいのか?」ケ
「動くな、もう少しだ」
シンゴは近づいて来てそう言った。
「伝令!拠点確認しました、ただいまより作戦決行です!」
伝令が駆けてきた。
「ご苦労、あいつにしくじるなと伝えてくれ」シ
「了解!」
「さぁて、恐ろしい気弾が空を舞うぞ」シ
「どう言う事だ?」こ
「さあ」ホ
「琴乃さん、今っす!」
ろし王がそう琴乃に伝えた。
「よーし、いっくよー!」
「左斜め45度に撃ってください」松
「伝令、シンゴ卿よりしくじるなよ、との事です!」
「まかしといて!万能なるマナよ!矢となれ!!」
空中に小さな気の玉が出来た。
しかし見る見る間にその気弾は大きくなっていく。
「はああああああ!」
気合を入れる琴乃。
やがて半径100M位の気弾が軍団の上に浮かんでいた。
「な、なんじゃあ、ありゃあ・・・」こ
「ふ、普通のエネルギーボルトだ、ただ、デカイだけだ」ホ
「デカイったって限度があるだろうよ!!」ク
「思い出した、そう言えばうきょーが言ってた、地球壊すくらいの気の玉が作れるって・・・」ホ
「あの気弾の着地点が進入点だ、ぽっかり穴あけるから走る用意しとけ」シ
「はい!」ホ
「琴乃さん、やっちゃってください!」ろ
「万能なるマナよ!矢となり・・・飛んでいけーーーーー!!」琴
気弾は巨大な矢となり飛んでいく。
「バルキリーよ! 矢を誘導せよ!」
松本のバルキリージャベリンはエネルギーボルトに数回当たり軌道修正する。
相手の軍団の後ろに落下。
巨大な爆音と地鳴りが響く。
「なんじゃーーーー!」こ
「大地震じゃないか!」ク
落下点の砂煙が消えた後にはぽっかり巨大な穴が開いている。
それを確認後、カオス隊が縦に伸びてその穴に近づく。
「よし、我等もカオス隊と繋がって縦に伸びろ、ホッホー達を守れ!」シ
「カオス隊、もうすぐ穴に到着です!」
「早いな、さすが俺を倒しただけはある、よし第六部隊、突撃!!」シ
「はい!行くぞ」ホ
「よっしゃ!」こな
ロシニョール聖騎士団を走りぬけ、カオス隊を抜ける。
「隊長、ご武運を!」
「隊長、死なんでくださいよ!」
元こなの部隊だけあってこなに対する声援がたくさん飛ぶ。
「任しとけ、お前らも死ぬんじゃねーぞ」
こなが声援を返す。
「頼んだぞ、余力が出来たら必ず俺たちも突撃する!」カオス
「はい、カオス隊もご無事で」ホ
もうすぐでカオス隊を抜ける。
そこで見た顔、いや見た鎧武者を見つけた。
先頭を切って戦っているきらきら光った戦士。
顔まで覆ったミラーヘルムを着たうきょーだった。
「頼むで、死んだらあかんで〜」
「師匠、マーファのご加護を!」ク
「うきょーさん、くだらないミスはもう結構ですよ!」う
「任しとけ!」う
うきょーの後ろを抜ける。
「マーファよ!あいつらに神の加護を!」
最後にうきょーは俺たちに印を切り、保護の魔法をかけてくれた。
「もうすぐ穴だ!敵に捕まるなよ!」ホ
穴まで400mくらいだ。
走りきれば俺たちを止めようとする竜牙兵も振り切れる。
振り切りさえすればうきょーたちが後ろから倒してくれるだろう。
「きゃ!」
後ろで転ぶ音が聞こえた。
「にゃんこ!」
俺たちもすぐ止まれない。
やがて竜牙兵に追いつかれた。
いくらにゃんこがシーフといえども転んでいては分が悪い。
杖を構えてエネルギーボルトを放とうとした時、
「魔法を使うな、そのまま進め! 自分に任せろ!!」
と後ろから声が聞こえてきた。
うきょーの後ろから恐ろしいスピードの影がこちらにやってくる。
どすっ!
竜牙兵とにゃんこの間に入って竜牙兵を下から突き上げ、吹っ飛ばした。
「味方になったら頼もしい男だねぇ、アンタ」
にゃんこがその男に向かって呟いた。
「あの素早さは何処に行ったんですか、しっかりしてくださいよ」
振り下ろされた剣を腕で受け、右腕から大量出血している男はモモだった。
「右手利かなくなったら仕事できなくなるよ、シーフの癖に」にゃ
「別にかまいませんよ、今度は倒しきってくださいよ、逃げちゃだめですよ」モ
「あの時倒しきってたらアタシ今殺されてたでしょうよ」にゃ
突き飛ばされた竜牙兵は後ろから追ってきたうきょーに倒された。
にゃんこはモモの頬に軽くキスをして戻ってきた。
俺たちは穴のところまで走りきった。
「おい、これ降りられんのか?」こ
巨大な穴は数100mくらいの深さが開いている。
「建物のとこに大きな穴が開いてる。 あそこに行こう」にゃ
「いや、行こうったって行きようが無いぞ」ホ
なにやらにゃんこは袋から道具を探している。
「これで良し」
にゃんこは弓をつがえた。
さくっ!
見事に数百メートル離れた基地の穴の横に刺さる。
弓矢には特殊なロープ蛾はつけてある。
「渡りな」
にゃんこは言い放った。
「確かにこれしかない、時間ないし急ごう」ホ
こなを先頭にそのロープを渡る。
かなり揺れて怖いが、時間もないし急いで渡る。
やがて全員渡りきり、無事建物の中に潜入できた。
「静かだな」ク
「ああ、もうちょっと敵が来てしょっぱなから戦闘三昧かと思ったがな」こ
「復活が近いのかもしれない、急ごう」ケ
「よし、調べよう」ホ
建物を一周するが入り口らしいものは何もない。
「クライ、にゃんこ、わかるか?」ホ
二人は風の動きを調べ、奥に隠し扉を見つけた。
扉を開けるとまがまがしい呪文が聞こえてくる。
「近いぞ! 構えておけ」ホ
声のする方にゆっくり進んで行く。
下行きの階段を見つけ、ゆっくり降りる。
地下二階に降り立った時、魔法使いと女精霊使いが現れた。
「ようこそ聖なる者よ」
魔法使いが語りかけてくる。
「なんだかやくざが魔法使いに鞍替えしたみたいな顔してるな」 こ
「ここから先は通すわけには行かないんだよ」
「何故、暗黒神など復活させるのだ!」ホ
「何を言う、もともとこの世は闇ではないか」
「何だと?」 ク
「綺麗事で世の中を渡って何が楽しい、所詮人の心の奥は闇が支配するのだ、我等は生き良い世界を作るのだ」
魔法使いは続けた。
「良い事を人にしてやって気持ちいいと言うなどただのエゴだ、結局は人を見下しているから自分のほうが上だと心がそう思い心地よく感じるのだ、所詮心の闇がそう思わせているだけなのだ」
「ずいぶんひねくれたオッサンだな」ケ
「スマン、魔法使いは大概あんなのばかりだ」ホ
「まあなんでも良い、ぶっ殺してやる!」ク
・・・本当に大地母神の信者なんだろうか。
「そうやすやすと殺されるか、鶴瓶」
「鶴瓶ゆーな!」ク
「何にせよこんなところで手間取っているわけには行かない、さっさと片付けるぞ!」ホ
「アタシは奥に行っとくよ」
といって女精霊使いが奥の間に行こうとする。
追いかけようとする俺たちの前を魔法壁が行く手を阻む。
「さあ、はじめようか」
そう言って奴は柱数本に魔法をかけた。
めりめりと動き出す柱。
「ちぃ、ゴーレムか!」ケ
ケンタの言うとおり、ゴーレムが4体現れた。
こな、右端1体頼んだ、クライとケンタは俺の魔法の後ゴーレムに突撃、にゃんこは魔法使いの集中をとぎらせてくれ!」ホ
「了解」ケ
「こらデクの坊、光刀 陽ノ下の錆になりやがれ!」 こ
こながまず走る。
「魔法戦の前哨戦だ、あっさり行っとこうぜ」 ク
「初っ端から飛ばしていくぜ!」 ホ
「ついでに魔法の壁もぶっ壊してよ」 に
「万能なるマナよ、嵐を呼び、雷となり、炸裂せよ!」 ホ
右の2対のゴーレムにHitする。
魔法が効いたと言えども相手はストーンゴーレムとかなりの強敵だ。
なかなか倒すとまでは行かない。
となると後ろの魔法使いは当然ながら無傷だ。
「畜生、なかなか倒れないぞ」 ク
「皆、耐えろ」 ケ
「そうだ、 いかに凄い魔法使いでも一度に数体の物を操るのは大変だ、数が増えることも不可能なら時間もそんなに続くとは考えられん!」 ホ
「ほう、なめられたもんだな」
魔法使いは何かを床に投げつけ、もう一度魔法を唱える。
出てきた物は巨大な竜牙兵だった。
「なんじゃー、このどでかい竜牙兵は!」 ク
俺等の倍はあるぞ…
その前に、何だこいつの魔法力は ケ
俺でも同時操作は五体までだぞ
「ホッホー、何だこの大きい竜牙兵は」 に
普通はこんなに大きくない。
だいたい人より少し小さいくらいだ。
しかしこいつのでかさは…
古代竜だ
「あいつら、古代竜倒したのか!」 ホ
「古代竜だぁ?」 ク
普通の竜はしもる王が乗る、人の三倍ほどの竜だ。
しかし古代から生きる竜は体も大きくなり、体は一つの城くらいの大きさになると言う。
元々が竜の牙に魔法を掛けて命を吹き込むのだから、牙が大きければ出てくる竜牙兵も大きくなる。
「あんなデカいモンが殺せんのか!」 ク
「休養期であれば何とかなるかならんか」 ホ
竜牙兵が五体出てくる。
普通の竜牙兵一体でも、一流の戦士並の強さなのに、こんなバケモンどうしようもない。
考える間も与えず奴らは攻撃をしてくる。
こな以外は逃げるのが精一杯だ。
「ホッホー、なんとかしろ!」 こ
「仕方ない、魔法壁を壊す、しばらく魔法は使えんから怪我すんなよ」
俺もゴーレムを出そうかと思ったが、時間の無駄は目に見えている。
「万能なるマナよ、魔法を解除せよ」
付近一帯を魔法が使えなくしてやる。
問題は向こうの魔法力だ。
レジストされる事だってある上に、俺は奴にだけではなく、付近一帯にかけるから、やはり確率は低くなる。
だからと言って負けるとは思わない。
俺とてガッセの宮廷魔術師だ。
ただの魔法使いに負ける訳がない。
「万能なるマナよ、暗闇を呼び死を呼び起こせ」
奴は死の雲の魔法を唱え、俺のディスペルマジックに対抗してきた。
「では、力比べと行こうか、ホッホー」
「何故俺の名を!」 ホ
「そんな事考えてて良いのか、貴様等を永遠の死を襲うぞ」
魔法がぶつかりあう。
各々が自分の側に引く。
俺の自信はうぬぼれだったのだろうか。
はっきり言って互角だ。
問題は奴はゴーレムや竜牙兵を操りながら、俺の相手をして互角なのだ。
俺の名前を知っているわ、この魔法力だわ。一体こいつ何者なんだ?
「貴様、一体誰だ?」 ホ
「そりゃお前さんは知らんよなぁ、元ガッセのウィザーズギルド長のさんたと言う」
「さんた? 12月に来る奴か?」 こ
「知ってるか?」 ク
「確か凄まじい魔法力の持ち主なんだが、禁止されている闇の魔法ばかり研究して、ギルドの停止命令を無視し続けたり、金借りてちっとも返さなかったり、接客中に酒飲んだり、ギルドの金を使い込んでセクキャバ行ったりと問題続きで首になった男がさんただ」 ホ
「最初はカッコ良かったけど、あとは最高に情けない理由だな」 ケ
「全くだ」 こ
「最後の説明は余計だ!」 さん
「元々ガッセは魔法の研究が盛んだからな、そのギルド長だったらたいした力の持ち主なんだろう」 ホ
「しかし、このさんたと言い、今前のギルド長のマニアなさくら氏と言い、ろくなのが居ないな」 こ
「言えてる」 ケ
「暗黒魔法の魅力すら分からぬ愚者どもに何ができる、闇の力こそが至上なのだ!」 さん
「うるさい、自分の頭もコントロール出来ねえ男がそんなもん語るな!迷惑なんだよ、馬鹿!」 に
「ほざいていろ、もうすぐ終りだ」
さんたはそう呟くと一層力を加え、魔法を強力にする。
「ぐうっ!」
「ホッホーしっかりしろ、そんな飲んべえ吹っ飛ばしてやれ!」 ク
「わかっている、わかっているが」 ホ
悔しいが魔法力に関して言えば奴のほうが上のようだ。
「一瞬でも奴の気が逸れれば・・・」 ホ
「一瞬だな、一瞬でいいんだな」 にゃ
にゃんこはそう言うと、小刀から弓に持ち替えた。
「弓は三本しかないんだからな、一発で絶対何とかしなよ!」 にゃ
「わかった、頼む」 ホ
「アポロンの矢、届く前に焼け落ちるなよー」 にゃ
引き絞り、弓を放す。
矢はディスペルマジックの領域からデスの魔法領域へ。
多少曲がりながらもさんたの頭に向かって飛んでいる。
「何だ、この矢は」 さ
さんたは頭だけを少し左に傾けた。
「一瞬、作ったぞ!」 にゃ
「今だ!」 ケ
「うわあぁぁぁぁぁ!!」
大声と共に渾身の力を振り絞る。
「しまった」 さ
黒い雲をかき消し、辺りが白い光に包まれる。
「しくじったわ」 さ
悪党の決め台詞をもらすさんた。
魔法で作ったストーンゴーレムは崩れ落ちて岩に戻り、竜牙兵も牙に戻った。
「観念しろ、しばらく魔法は使えねえ、お前の負けだ」 こな
「それはどうかな」
さんたは指を鳴らすと後ろから一つ目の巨人が3体出てきた。
「サイクロプスだ!」 ケ
さすがは元々は学者のケンタ、一目見ただけで種別の反別が出来たようだ。
「おい、今魔法は効かないんじゃないのか」 ク
「最初は魔法で捕獲したんだろうが、後は洗脳したんだろう」 ケ
「行け、奴らを葬れ」 さん
ゆっくりゆっくり近づいてくるサイクロプス達。
手に持った大きな棍棒は、神木を折って作ったものなんだろう、相当巨大なものだ。
「後は任せよう」
さんたはそう言って後ろへ引こうとする。
「待て!」 ホ
「馬鹿野郎、前を見やがれ!」
こなが叫ぶとすでに棍棒は俺の前で振り上げられていた。
猛ダッシュで左に逃げる。
ずずーん
さっきまで居た所に棍棒は振り下ろされる。
「助かった、サンキュー」 ホ
「これは戦争だ、疲れていても前だけは見とけ」 こ
おもむろに攻撃してくるサイクロプス達。
みんな必死に避けているが、後ろにいるケンタだけは先頭のサイクロプスを見続けていた。
「ホッホー、いつ魔法が使える?」 ケ
「ん、あと3分くらいじゃないか」 ホ
「皆、3分逃げ回ってくれ!」 ケ
ケンタはそう叫んだ。
3分、たった3分とはいえ必死に逃げ回るのは本当に疲れた。
「多分もう使えるぞ」 ホ
「じゃあ先頭のサイクロプスだけにもう一度強力なディスペルマジックを掛けてくれ」 ケ
「何でだ? こいつは洗脳されてるから・・・」 ホ
「目が何かを訴えている」 ケ
「目だぁ? こんなでっかい一つ目がか?」 こ
「よし、わかった」 ホ
「強力なのだぞ!」 ケ
「万能なるマナよ、彼の者を制約せし魔法を解け!」 ホ
魔法解除のディスペルマジックではなく、魔法の命令を解くディスペル・オーダーを掛ける。
「効いた?」 にゃ
サイクロプスの動きが止まる。
「ぐるるるる」
「感謝する、だそうだ」 ケ
「何でわかるの?」 にゃ
「大学でサイクロプス語も専攻した」 ケ
「マジかよ、嘘くせぇ」 こな
「サイクロプスは天地創造の頃からの生物って言われてるからな、学者は興味あるよ」 ケ
「ぐ、ぐるるるるぐわぁ」
「彼は巨人族の王だそうだ」 ケ
「まだ倒していないのか、まったく愚図な連中だ」
さんたが戻ってきた。
「ぐるる、るるる」
「私がほかの二人を止めるから私ごと撃ってくれ・・・だそうだ」 ケ
「何でだよ、もう正常に戻ったんだったら倒さなくていいじゃないか! ほかの二人もホッホーが元に戻せばいいじゃないか!!」 にゃ
「そうだ、今解除魔法を掛ける!」
俺はそういって杖を構える。
サイクロプスの王は後ろを向き、残りの二体を止める。
「何をしている! ええい、その愚図ごと倒してしまえ!」
さんたは残りの二体に命令をする。
「ぐるるるる」
「ほかの2体は洗脳されきっているらしい、王だけが魔法洗脳できなかったから魔法のみで操られていたそうだ、弱くなったから解除できたんだろう」 ケ
「じゃあ他の2人だけでいいじゃん! 王まで殺すことないじゃん!!」 にゃ
王は他の2体の攻撃を受け止めている。
2対1ではそんなに持ちそうに無い。
「ぐるる」
「我とて王として生き恥をさらす気はない、民ごと撃ってくれ・・・と」 ケ
通訳するケンタは涙目だ。
「判った」
そう呟いたのはこなだった。
「貴公の誇りあい判った、俺も武人として手助けしよう」 こ
「こな・・・」 ク
「民を思う気持ちしかと受け止めた、最後はガッセ王国傭兵隊隊長こなみるくが・・・」
剣を上段に構えたこなみるく。
その目は鋭く、怒りに燃えていた。
こんなこなの目を俺は初めて見た。
「御身の最期を・・・我が介錯致す」
「こな!」 にゃ
「久々に本気になったぞ、後ろの腐れ外道を一瞬に葬って愚行を永遠に後悔させてやる・・・」 こ
「援護する!」 ホ
「いらん! 黙って巨人族の王の最期を見届けてやれ」 こ
「・・・わかった」 ク
「巨人族の王よ!覚悟!!」
一言だけ残し、こなは俺の横から消えた。
王の首を切り、右に、左に飛んで
さんたの元に一瞬で駆け抜けた。
剣に掛かっている魔法の効果か、こなの本気が凄かったのか。
盗賊以上に早く駆け抜けて剣を振るった。
崩れ落ちる巨人族。
首から滝のように血が流れ出る。
こなは確実に3体の動脈を切ったようだ。
「こんなことが・・・」
その後にさんたも崩れ落ちる。
さんたは腹を一突きされていた。
「ぐるるるる、るる」
「戦士よ、感謝する・・・だそうだ」 ケ
崩れ落ちた王。
「先にあの世で待っていてくれ、王よ。 俺がそちらへ行ったら共に酒を酌み交わそう」 こな
王の近くに歩み寄るこなみるく。
にゃんこは泣きながら王の下で泣き崩れている。
「ぐるる」
「人間の少女よ、泣いてはいけない、笑って見送ってくれ だってさ」 ケ
王はひとつしかない目をウインクさせ、にゃんこに笑いかけた。
「ぐるるるる、ぐるる。るる」
「君たちの国を我等が蹂躙しないことを誓おう、魂となり我等の一族に伝えよう」 ケ
そう言って息を引き取った。
「せめて丁重に弔ってやる」
そう言ってこなは3体のつのを切り落とし、腰に結わえた。
「これで何としても帰らなければならなくなった、くろねこも殺って帰るとするぞ」こ
「そうだな、行こう」 ク
前を見るとさんたがいない。
血の後が奥に向かって延びている。
「野郎、死んでなかったか」 こ
「急ごう!」 にゃ
走って奥の間に向かう。
目の前にまがまがしい祭壇がそびえ立ち、脇には数十名の黒い服を着た神官が祈りをささげていた。
「そこまでだ! おとなしく祭器を返しやがれ!」
数10Mほど先にいるくろねこに向かってこなが叫ぶ。
その元にさんたが向かっていた。
「果たしてそうかな?」
「当たり前だろうが! ケンタがここにいるんだ、復活させようが無いだろうが」 ク
「聖なる者を欲したのは何も復活に絶対必要だったからではない」 くろ
「何だと!」 ケ
「我らより先に聖なる神を復活させられたら困るからだ」 くろ
「じゃあ何故誘拐しようとした」 ホ
「まあ、我等も痛手が無いゆえなぁ」 くろ
「痛手?」 にゃ
「我らもその血の持ち主なのだよ、ただ暗黒の血だがな」 くろ
「我ら?」 にゃ
「弟よ、我に回復魔法を」
やっとくろねこの元にたどりついたさんたはくろねこにそう言っている。
「兄よ、その血を我等一族のために頂くとする」
言うが早いか、くろねこはさんたの首を刎ねた。
さんたの首が飛び、血が祭壇の上に流れ落ちる。
「我ら一族の黒き血をここに捧げる、皆の者暗黒神ファラリスへの祈りを捧げよ!」
「野郎、ためらいも無く自分の兄貴殺しやがった」 ク
周りにいる神官が暗黒神への祈りを捧げ始めた。
「そこで暗黒神の復活を指をくわえて眺めているがいい」 くろ
くろねこはさんたの血のある所にドラゴンオーブとフェニックスアイを置く。
「そうはさせるか!」
こなは剣を構え走り出す。
「精神の精霊バルキリーよ、彼の者にいましめの矢を!」
祭壇の下から魔法が飛んでくる。
「こな、レジストしろ!」 ホ
こなの腹にバルキリージャベリンが命中する。
「危なかった〜」
こなは多少のダメージがあるものの無事レジストできたようだ。
「さすがだな、いるかよ」
「礼は不必要、じきにアンタの野望ごと砕いてやる」
いるかと呼ばれた女はそう言っている。
「炎の精霊イフリートよ、炎の渦を!」
目の前で炎の渦が巻き起こる。
「くそう、なかなか収まらんぞ!」 ク
「ホッホー、消せないのか?」 ケ
「たぶん駄目だ、あの女イフリートの名を出してた、炎の精霊の王の魔法なら無理だな」ホ
「じゃあこのまま暗黒神の復活を奴の言うとおり指くわえて待ってるだけかよ!」 こ
炎の向こうから巨大な水晶球が転がってくる。
「暇なようだな、その遠見の水晶球で外でも眺めているがいい!」
「何だと」こ
手にして覗いてみると確かに外の風景が目に入ってくる。
ごごごごごごごご
突如起こる地震。
立っているのもやっとなくらいだ。
「暗黒神ファラリスよ! 我召還す、暗黒の血を吸い、この血に復活せよ!!」
さらに地震は巨大になる。
「ホッホー、見ろ!!」 ケ
ケンタに促され、水晶球を覗く。
外の巨大魔方陣からマグマが噴き出している。
完全にマグマが魔法陣になった時、地下から黒い霧が噴き出した。
「いるかよ、屋根を吹き飛ばせ!」
目の前にある炎の渦は、威力を増し、天井に向かって行く。
地下にあったはずのこの神殿から空が見えるようになった。
しかし空は昼間であるにもかかわらず暗く、黒い雲が渦巻いていた。
「やばいぞホッホー、魔法で何とかしろ!」 こ
「よし、万能なるマナよ、凍てつく吹雪となれ!」
ブリザードの魔法を掛ける。
若干火の勢いは弱まった。
「よっしゃ! 任せろ!」
クライは炎の中を軽く駆け抜け、飛び掛る。
「そこの女精霊使い、覚悟!」
クライの攻撃をレイピアで受け流す。
「今は待て」
いるかはクライにそう語りかけた。
「どう言う事だ?」 ク
「貴公達に助太刀する、復活するまで待ってくれ」 い
「意味がわからん、俺はくろねこを今ぶっ殺す!」 ク
いるかから離れ、くろねこの元に駆け寄るクライ。
「待てと言っている、 光の精霊ウイルオー・ウイスプ、彼に当たれ!」
スライムみたいな青白い光がクライの目の前に浮かび上がり、クライの前で炸裂した。
後ろに飛びのくクライ。
「やばい! 霧が実体化してきた!!」 ホ
だんだん大きくなってきた霧を水晶球で見ていたが、今では崩れた屋根からも見えるほど大きくなっている。
黒い霧はどんどん大きくなり、やがて実体化してきた。
「では、さらばだ」
くろねこは魔法で空を舞った。
それと同時に炎の渦も消えた。
「テメェ、復活しちまったじゃないか、どう責任取ってくれるって言うんだ!」 ク
「私はナラ王国魔術団長 いるか、 今は無き王からの命により貴公を影から支え、暗黒神を撃つよう命じられた」
「ナラ王国だ?」 こ
「ああ、ROM王からの命だ、 王国を奴に壊される直前に命を受け、貴公らの手伝いをするよう言われていた」 い
「じゃあ早くから一緒に来てくれよ! 第一さっきくろねこ殺してれば万事OKだったじゃないか」 ケ
「王の命の最終目的は暗黒神の抹殺、貴公らとは少し考えが違っていた」 い
「ナラ王国は暗黒神復活を知っていたのか?」 こ
「ああ、情報は早くから知っていた、その為に早めに潰されたのだろう」 い
「国違えば思想も違うか、しかしもし無理だったらとか思わなかったのか、ROM王は」 ホ
「貴公なら大丈夫だと、ホッホー殿に従えと言われている」 い
「そんなこと悠長に言ってていいの? アイツは飛んで行っちゃったんだよ」 にゃ
「そうだ、急ごう!」 ホ
「どうやって行くんだよ?」 ケ
「あいつが飛んで行ったんだったら俺だって皆飛ばしてやる」 ホ
「え?」 ク
「万能なるマナよ、我らの重力のかせを解け!!」
皆が徐々に浮かび上がる。
「いいか、今のとこ10分くらいしか浮けないからな、考えて飛べよ!」 ホ
「おお、なんかすげぇ!」 ク
「よっしゃ、さっさと探してやろうや」 こ
暗黒神復活か。
俺たちがそれを止めるか。
世界が揺れている。
俺たちを中心に。
最後の戦いが
近づく。