最終章

神か悪魔か




間に合わなかったか。


シンゴが呟く。


すでに軍団は一つに集まった状態だ。


「倒しても倒しても沸いてきやがるな」 カイ


「沸いて出てきているな、間違い無く」 シ


少し先ではマグマが吹き出してきている。


マグマで魔法陣が描かれているのだろう。


黒い霧が吹き出し、どんどん大きくなる。


「これじゃあ突撃できないっす!」


ろし王が叫ぶ。


昔カイザーから買った剣を振りかざす。


「ろし王、下からスケルトン出ます!」


今ではロシニョールの宮廷魔術師となったさくらが叫ぶ。


「せめて松本さんだけでも突撃できないですか?」


「無理ですな、イフリートを召喚して相手を焼き付くそうにも出てきません、どこかですでに召喚されているようです」 松


「王、前を!」 さく


スケルトンの群れはすでにろし王の前に居た。


何か一体やけに王に突進してくるスケルトンがいる。


さくらが王の防御に入ろうとして気づいたようだ。


「くあとろさん!」 さく


「へ?」>ろ


「腐った肉も朽ち果ててスケルトンになったんでしょうねぇ」>さく


「ほう」>ろ


「やっぱりその剣を返せってことじゃが言いたいんじゃないでしょうかねえ?」>さく


「うるさいっす!この剣はカイザーさんから買ったから俺のっすー!」


と叫んで飛びかかり、くあとろの頭(肉無いから頭蓋骨)めがけて切りつけた。


「ぎゃああああああ!」


崩れ落ちる肉塊。


「何か1と一緒のセリフしか無かったですね」>さく


「やっぱ名脇役ですから」>ろ


「そうですね、さらにここほとんど2のコピーですしね」>さく




言わないでくれ。



しもる王はいまだに竜とともにワイバーン騎士団を打ち、さらには空から敵を焼き付くしている。


しかし竜たちもそろそろ疲れもピークに達するだろう。


そうこうしていたら黒い霧は巨大な人の形を表し出した。


「しもる王、ここにいては相手もろとも全軍全滅の危険が!」


さゆりが何かを察知する


「ぬうっ、全軍魔法陣より引け! 相手をひきつけながら後退だ!」


攻撃しながら引くのは至難の技だ。


多数の兵が打たれた。


拠点に援軍など送る余裕など無い。


「来たぞ、暗黒神や」 カイ


「ああ、しかしこの距離では」 カオ


「援護なんか出来ひん」 う


「魔法陣、崩壊します!」 さゆ


「畜生」 松


「頼んだ、ホッホー」 シ






「何処に行きやがった、あの野郎」 こ


上空からくろねこを探す。


「しまった! 祭器忘れた!」 ホ


「ちゃんと持ってきてるよ」 に


さすがにシーフだ、宝は忘れない。


「でも二つしかなかったよ」 に


確かににゃんこが持っているのはドラゴンとフェニックスオーブだけだった。


ブレイクメイスが無いのか。


二つの祭器をケンタに渡し、くろねこを探し続ける。


黒い霧が左に向いている気がする。


「あの正面じゃないか、ひょっとしたら話してるかも」 ケ


「なるほど、言えてる」 ク


「よし、行くぞ」 ホ




予想は的中し、くろねこを発見する。


『受け皿はいずこに』


黒い霧は語りかける。


「我に乗り移れ」


くろねこは言う。


すると霧はくろねこに向かって行く。


「ぐあああ」


くろねこは苦しんでいる。


「最後のチャンスだ、切れ、こなみる!」 ホ


「よっしゃー!」


急いで近くに着地。


こなはくろねこに向かって走り出す。


「死ねやぁ!」


バシッ


霧はこなを吹き飛ばした。


どんどんくろねこに入って行く霧。


もう少しで暗黒神がくろねこの体に入りきる時だった。


「我、暗黒神の破壊を命ず、破壊せ…よ 偉大なる魔導師の魂達よ」


くろねこはブレイクメイスを自分の体に打ち付けた。


ギャーー


金切声がしばらく辺りにこだまする。


俺達は空気の振動で会話も動くことも出来なかった。


くろねこの体から雷がほとばしり、やがて大爆発を起こした。




振動がやむ。



一体どうなったんだ?ク


煙で何も見えない


「何かくるぞ!」 ク


煙を割って出てきたのはブレイクメイスを手にしたくろねこだった。


身構える俺達


「くっくっく、待たせたな」


赤い目をしたくろねこが近付いてくる。


「一体何をしたんだ」 ホ


「我が神となったのだよ」


「神だぁ?」 こ


くろねこは手を魔法陣に向け、一つ魔法を唱えた。


魔法陣は崩れ落ち、大きな穴となる。


下には溶岩が湧き出ているのだろう。

この辺りまで暑い。


「暗黒神の力だけを頂いたのだよ、我が暗黒神 ファラリスとなったのだ」


確かに奴からは想像を絶するほどの力を嫌でも感じる。


「野郎、最初から神の力だけを奪うつもりだったのか」 こ


「なんかほっぺたまでびりびりするよ」


にゃんこが言う通り、波動がほとばしってくる。


「これで私を脅かす物はこれのみとなった訳だ」


ブレイクメイスが空中に浮く


それを俺達の前に動かして



「砕けよ」



その一言で砕け落ちた。


俺達の希望も砕け落ちた。


「神に呪いが掛ると思うのか、これで私の勝ちだ」


砕けたブレイクメイスから白い物達が俺に向かってくる。


『破片を集めよ』


『修復せよ』


『奴に永遠の死を』




どうやらブレイクメイスに封じられていた魔導師達の魂のようだ。


「さて、貴様等には我の初めての生贄になって貰うとする」


黒い雷が俺達に向かってくる。


「万能なるマナよ、魔法の壁となれ!」 ホ


「シルフよ、私たちを守って!」 いる


しかし二つともあっさり破られる


「ぐうっ」


「弱い、弱いな人間どもよ」


「バルキリーよ、矢となりファラリスを打て!」


いるかはバルキリージャベリンを放つ。

確実にヒットするも傷を負わすどころか衝撃で体を揺らすことすらなかった。


「どうするんだよ! ビクともしねぇぞ!」 ク


「俺が魔法の壁を作る、後は何とか傷を負わせてくれ」 ホ


こんなことしか言えない。


「万能なるマナよ、魔法の壁となれ!」


さっきより力を入れて壁を作る。


「無駄と言うことが分からぬようだな」


「イフリートよ、盟約により姿を表せ!」 いる


くろねこの前に現れる巨大な炎。


一瞬目をやり、掌を炎に向ける。


炎の柱は一瞬で氷の柱と化した。


「隙あり!」


クライが飛ぶ。


「もらったぁ!」


クライが左から突撃する。


左手で払っただけなのにまるで人形のようにクライの体が宙を舞う。


「クライ!」


ケンタが駆け寄り回復魔法をかける。


一撃で気絶させらている。


「魔法壁が無ければ死んでたな」 ケ


「これほどまでとは」


いるかが言葉を漏らす。


せめて一太刀どころか、近付く事も叶わない。


「野郎・・・」


クライが回復する。


「ほう、しぶといな」


「この程度でくたばるか! マーファよ、彼の者に鉄槌を! 戒めの嵐を!」


手のひらから気弾が炸裂するフォース・イクスプロージョンだ。


確実に当たっているものの完全にレジストされている。


「そんなものが効くはずが無いであろうが」


今度はケンタとクライにクライに掌を向ける。


「滅せよ! 聖なる血よ!」


「させるかぁ!」


俺は持てる力の全てを振り絞り、魔法壁を強力にする。


びきびきっ!


駄目だ、力の差が激しすぎる。


「負けるかぁ、神でもなんでも良い、手を貸せ!」


俺は目をつむり、集中する。




はいはい



そんな声が聞こえた。


目を開けた。


ケンタもクライも無事だ。


魔法壁が透明ではあるが目に見えるほどの壁になっている。


ぬっ


一体何処から?



指が光っている。


『困ったことがあれば指輪に問え』


そんなシンゴさんの声が頭をよぎる。


「指輪!」 ホ


「もう、名前で呼んでよね」


指輪の上に小さな女性魔法使いが立っている。


「あれ?」


指輪の女性は俺を見て首を傾げている。


だれ?


とでも言いたげだ。


「俺、この指輪を借りたホッホーって言う」


「なにー、勝手に貸したなー、後でこらしめてやる」


指輪の女は怒っている。


「暗黒神じゃん!」


「わかるのか?」


「魔法力で分かるでしょ、何で暗黒神が復活してんのよ!」


簡単に事情を説明する。


「で、ブレイクメイスは?」


「それまで知ってるのか?」


「元々は大魔導師ですから」


「大変なことに破壊された」


「ふぅん、じゃあちゃっちゃと直せばいいでしょー」


「どうやって?」


「時間復元魔法があるでしょ」





「あった!!!」


「しっかりしなよ、魔導師」


「しかしこの壁を維持できない」


「あたしが何とかしてあげるから」


そう言うと彼女は俺のより強力な壁を作り出す。


「しばらくしか持たないよ!」


「わかった、万能なるマナよ、時を操れ、この物をありし日の姿に戻せ!」




砕けたブレイクメイスが魔法の元に集まり出す。


「時間が掛る、何とか耐えてくれ!」 ホ


「任せろ!」


こなが、クライが飛ぶ。


ケンタは魔法陣を描いている。


「壁から出ちゃだめ!」


「雑魚がぁ!」 く


二人が弾け飛ぶ。


いるかも魔法をやめ、剣で飛び掛る。


「大丈夫か、こなさん」 ク


頭から落下したこなに回復魔法を掛けるクライ。


「サンキュー、助かった」 こ


同じところにいるかも吹き飛ばされて、同じように回復魔法を掛けるクライ。


「まだか、ホッホー!」 こ


「まだだ、時間をくれ!」 ホ


「遊びはここまでだ、死ね!」 く


くろねこの左手から黒い光が延びる。


「ぐあっ!」


剣の形をした黒い光はクライに延び、心臓を一突きした。


「クライ!」


ケンタが駆け寄り回復魔法を掛けるも、心臓は再び動き出すことはなかった。


「畜生!よくもやりやがったな」


こながフェイントをかけて突撃するも、空高く体が舞い、たたき付けられるだけだった。


痙攣しているこなみるく。


「もうすこしだ」


だんだんメイスが形を取り戻してきた。



「それを回復されては困るな」


クライに向けた黒い光を俺に向ける。


「さらばだ、天才魔法使いよ」


光が延びてきた。


壁が突き破られる。


どすっ


・・・痛みはない。


下にはいるかが転がっている。



「うちの国の失敗を貴公に押し付けるのはなんだが、奴を…滅ぼしてくれ」


そう言っているかは息絶えた。


「畜生、もうたくさんだ!」


ケンタが叫んだ。


「暗黒神だ? 聖なる血だ? もう守るとか知るもんか!」


ケンタはクライの剣で自分の左手首を切る。


血が流れ落ちる。


「仲間がやられてるのを眺めていられる俺はず太い神経もってねーんだよ! 俺に力があるなら出しきってやる!」


血が流れ落ちるところにはケンタが描いた魔法陣と祭器があった。


「聖なる神 ファリスよ! 我を受け皿とし、大地に復活せよ!」




魔法陣は白い光に包まれる。


さすがに純粋な血だ、ファラリスよりも早く実体化する。



「俺に乗り移れ!  ファリス」


「やめろ、魂ごと吹き飛ぶぞ」 ホ


「いいからお前は続けろ、ホッホー」 ケ


やがて実体化した神がケンタに乗り移り出す。


「甘いな」


時間が足りなかった。


ケンタはくろねこの黒魔法により吹き飛ばされ、召喚は失敗に終わった。


「ケンタ!」 ホ


「ファリスよ…我の仲間を……手助け」


最期に仲間の無事を祈りつつ、そこでケンタは息絶えた。


「ケンター!」 にゃ


「シェオル、ハデスだ」


「なんだ、それ?」 ホ


「悪魔も焼き尽す炎だよ、灼熱の炎ならきっと神も」


指輪は言う。


「ならあそこに叩き込んでやる、にゃんこ、俺に続け」


俺とにゃんこはじりじりマグマの吹き出す穴に近付く。


「終わりだ、ホッホーよ」 く


「にゃんこ、弓は二本あったな」 ホ


「あるよ」 にゃ


「連発で打てるか?」 ホ


「馬鹿にしちゃいけないよ、一秒間隔でも打ってやる」 にゃ


「よし、じゃあまっすぐ同じ軌道で一秒後に打ってくれ」 ホ


「なかなか厳しい依頼だね、やってやるよ」 にゃ


「打ったらすぐに逃げろ、軍団に今の有り様を伝えてくれ」 ホ


「そんなこと出来ないよ!」 にゃ


「いいんだ、魔法の後に頼むぞ、今居るところに打ち込んでくれ」 ホ


「ミリ単位で撃つんだよ、アイツ動かないかい?」 にゃ


「アイツ抵抗できる絶対的な自信があるからな、避けはしないさ」 ホ


「わかった」 にゃ


「万能なるマナよ、死を呼ぶ雲となれ!」


くろねこの付近に雲が現れる。


「神がこんな魔法でくたばる訳が無いだろうが」


よし、完全に隠れた!


「にゃんこ!」


「いくぞー!」


さっきくろねこの居た所に向かって矢を放つ。


矢は確実にくろねこに向かう。


雲を吹き飛ばしたくろねこは額で弓を受け止める。


「この程度では」


言うが早いか矢が早かったか、二本目の矢がくろねこに刺さった弓矢を押した。


「ぐうっ、しかしっ…」



出来た!


タイムトゥチェンジの魔法により、ブレイクメイスは元に戻った。


「先の偉人達よ、世界を守りし力となれ!」


魔法を唱えながら死の雲を駆け抜ける。


「ガッセ宮廷魔術師ホッホーの名において命じる、暗黒神ファラリスを砕け! 我等に勝利あれ!」


ブレイクメイスは光を放つ。


「くろねこ、覚悟!」


ばしぃぃぃぃ!


爆発的な光がくろねこと俺の間から発生する。


ギャーーー!


再び金切声がこだまする。


ぴしぴしっ!


ブレイクメイスもさすがに神を相手に二回も使われたのが響いたのか、ヒビが入る。



ぱしーーーん!



ブレイクメイスが砕けたのと同時に、くろねこの体から逃げようとするファラリス。


ケンタの祈りがきいたのか、ファリスであろう白い霧がそれを阻止し、封じ込める。


よろめくくろねこ。


「こんな事が、こんな事が」 く


とどめを打とうとも、俺も全ての精神力を使い果たした。


もらった魔晶石も使い果たして砕け散ってしまった。


「まだだ、次は破壊神召喚を…」


ゆっくりケンタの所にある祭器を奪おうと移動する。


「貴様を、貴様を撃つ」


最後の力を振り絞り、俺はくろねこをマグマへ押す。


しかし、いまだに暗黒神は倒しきっていないので相手のほうの力のほうが強く、逆に押されている。


「指輪! 何か魔法! 」


「マナよ、鉄槌となり打て!」


聞いたことのない魔法が発動する。


くろねこに衝撃波が走る。


掴んでいた俺もろとも吹き飛ぶ。


くろねこと二人でマグマの穴に落ちる。


落下しながらくろねこは体を交わし、暗黒神と分離する。


「さらばだ、偉大な魔術師よ」


俺とくろねこが離れて空に舞い上がろうとした時


「ホッホー、お前ばっか良いカッコしてんじゃねぇ!」


と言う叫び声とともに上から落ちてきた奴が居た。


「こなみる!」


「光刀 陽ノ下! 奴を叩き切れ!」


くろねこめがけて光の剣を振るった。


体が真っ二つに裂け、暗黒神と宙に浮いている状態の俺より先にマグマへと落ちていった。


「まだだ、まだ終わってない!」


この暗黒神も一緒に殺る!


暗黒神と一緒にゆっくり落ちている俺の所にこなみるも来た。


こなの重さで落下速度は早くなるが、暗黒神も抵抗しているためゆっくり落ちている状況だ。


「こな、お前を魔法で飛ばす! 逃げろ!」


「馬鹿野郎、お前と俺は一心同体だ、もう一回あの世へ二人で行こうじゃないか」


「こな・・・」


「長い付き合いじゃないか、お前がどう思おうが俺はお前を兄弟のように思っている」


「…」


「お前一人だけを行かせはしない」





「行くぞ、最後の力をもっかい出せ!洞窟で使ったあの魔法を俺の剣に打て!このバケモンの体にブチ込んでやる!」


「わかった、あの世で会おうぜ、兄弟!」


「くたばれ、神よ!我が愛刀の錆となれ!」


ざくっ!


「今だ!やれ!」


「万能なるマナよ、原子となり、炸裂せよ!」


こなの剣を杖がわりにして発動する。


「踊れ!光よ!!持てる力をすべて奮い立たせろ!!!」


光と共に魔力が暴走する。


暗黒神に流れ込む魔法。


「ぐあああ!」 こ


俺たちもこの魔法を食らっている。



やがてファラリスは抵抗がなくなり、引力にしたがって俺達は暗黒神と共にマグマに落下した。





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