タイトル なし



眠らない街東京


だれがそう呼んだかは知らないが、その町はそう呼ばれている。
街にはカネと欲望が氾濫し、善も悪もはびこる街である。



しかし俺の住む町はそんな大都会東京ではなく、兵庫。



日本第二の都市とも言われたり、大阪民国と某サイトで言われたりする大阪ですらない。


さらに兵庫と言っても港町神戸でもなく歌劇で有名な宝塚でも、過激と言われる尼崎でもない西宮。



そんな特段何があるわけでもない町で俺は育った。


特段何があるでもない小学生活、中学生活、高校生活。

無難にやり過ごしてきた。


少し変わったところがあると言うなら、よくデジャヴを見たり、変なものが見えたりするだけだった。



「気のせいやって」

友の前林はそう言うが。


最近はよからぬものがよく見える気がする。


その辺の話が大好きな八木は中学以来連絡は取っていないし、

変なものが色濃く見えるらしい阪井に至っては、俺が話をしただけでキレる時があるから役に立たない。


アイツは火病ではなかろうか。
顔もアジアンテイストだしな。



自転車に乗ってバイトに向かう。

車など買う余裕もない。


この辺で生きるのに車など不要だ。




そう言い訳して伊丹まで自転車をこぐ。


武庫川の武庫川新橋の真ん中に差し掛かった時だった。


汚いおっさんが歩道で倒れている。


うわー
嫌なモン見たなぁ。


・・・バイトもあるしスルーしよう。

倒れてるおっさんを無視し、横を通り過ぎて走り去る。


おかげでバイトに遅れずに済んだ。


遅刻したら給料引かれるし査定も悪くなるしな。

おっさんには悪いけど日本には救急車と言うものがある。
誰かが電話して助けてくれるだろう。



一週間後の新聞に、そのおっさんのことが書かれた阪神版の記事が出ていた。

なんでも金持ちだったそうで、救急車が来るまで心臓マッサージして命を助けた青年がお礼に仁川の土地を貰ったとか書いてやがる。



死ね。


どっちも死ね。



あーあ、金持ちなら助けておけばよかったな。

さっさと土地売っ払らって遊び倒せたのに。



で、その一週間後

散歩の帰り道に今度は宝塚の美幸町で人が倒れていた。


今度は助けよう。


よこしまな思いで助ける。






ボグッ!!!



どさり


後方からバールのようなもので頭を殴られた。




失われ行く意識



どうやら古典的な追いはぎだった様だ。


その後も暴行を受けているようだ。
痛すぎてわからないが。



おととい出たばかりの給料の大半を盗まれた。


畜生



病院のベッドで警察に事情を話す。

「ま、お金は返ってこないと思ってくださいね」

警察はそう言って帰った。

宝塚警察は本当に仕事しないな。

阪井同様そう思った。

見舞い客は見舞い客でロクに見舞いの品も金も持って来ない。

前林と阪井に至っては爆笑して帰りやがった。
さらにジュース奢らされた。


皆死ね。



まぁ(親が)生命保険に入っていたので入院代は何とかなったし、休業補償もどうにかなるらしい。

じゃあ一ヶ月くらい入院していよう。



悲しくも一ヶ月がすぎた。

ぼちぼち退院しなければいけない。


3食昼寝付の生活は気楽だったんだけどな。


バイトにも復帰。


しかし仕事中の事故ではなかったので休み倒して皆に白い目で見られた。

被害者なのに。


バイト復帰以降、バイト先によく警察が来て事情を聞かれた。

どうやらこの辺りで謎の通り魔事件が発生しているようだ。

俺も色々と覚えている事はないかなどちょくちょく聞きにきているようだ。



それが続いたある日。



「中村君ちょっと」

店長に呼び出された。


「警察がしょっちゅう来るからこの店で何かあったのかって変なうわさがたってるんだよね」


「はあ」


「飲食店ってやっぱりイメージとか大事だしね、警察がしょっちゅう来るとかは厳しいんだよ」






・・・・・・







どうやら俺にバイトを辞めて欲しいようだ。


仕方なくやめることにしたが、
「この事件が解決したらまた雇うから!」って言ってた店長の目は泳ぎまくっていた。


店にダンプでも突っ込め。



無職になって暇なので街中を徘徊する。


「あー、君君」


振り向くとおまわりが立っている。



・・・・・・





今度は警察に職務質問受けてるよ



貴様らのせいで職を失ったと言うのに。
その怒りをぶちまけた。


「何で俺が職質受けなアカンのじゃ!」

「俺この間まで被害者やってんぞ!」

「わかってんのかい!」


俺は近々の恨み辛みを警察にぶちまける。


「おー、こら!」

どん!!


警察の若い方を突き押す。


「お兄ちゃん、いまの公務執行妨害やで」



黒と白のパンダカーに招待される。






とうとう身柄を確保されてしまった。



署でこってり絞られたが、事情も事情で放免となった。